2021 Fiscal Year Annual Research Report
Generation of novel bimolecular functions with artificial chaperone engineering
Project/Area Number |
21H03816
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
丸山 厚 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (40190566)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人工シャペロン / 核酸 / 脂質 / ペプチド / 自律制御 / 遺伝子デリバリー / 脂質シート |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで蓄積された人工シャペロン材料の概念を先鋭化し、核酸、タンパク質、脂質を含め「生体分子だけでは実現不可能な機能を、自己組織化特性を厳密且つ柔軟・順応的(adaptive)に制御する材料設計で創発できないか」という問いに答えることを目的とし、本年は以下の検討を行い知見を得た。 カチオン性共重合体のシャペロン活性の核酸ナノテクノロジーへの展開:核酸分子間の連鎖反応であるアロステリック型核酸酵素およびハイブリダイゼーション連鎖反応に対する効果を検討した。共重合体はアロステリック核酸酵素MNAzymeのマルチプルターンオーバー活性を著しく上げることを既に明らかにしたが、その塩基配列特異性をさらに検討した結果、一塩基変異も充分識別出来る事が確認された。また、バイオセンシング等様々な応用が期待されているハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)を、共重合体が顕著に高めると共に、核酸分解酵素から構成核酸を保護し、血清存在下でも高速にHCR反応を駆動できることを見いだした。タンパク質フリーの核酸検出法への応用が期待される。 脂質膜構造の動的制御:既に共重合体は膜活性化ペプチドの活性を向上すると共に、ベシクル状の脂質膜を定量的にシートへと展開することを明らかにした。共重合体のシャペロン活性を環境に応答するように設計した結果、pH、温度などに自律応答しベシクル・シート間を構造転移する動的脂質膜デバイスの構築に成功した。DDSのみならず新たな細胞工学材料としての利用が期待される。 液液相分離型シャペロン材料の構築:既にウレイド基を側鎖に配した高分子が、温度応答性の液液相分離を形成することを見いだしたが、液滴内に核酸酵素を内包しその活性を高められることが見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1,これまで明らかにしてきた核酸酵素のみならず高分子量の核酸集合体が形成されるHCR反応も共重合体を微量加えるのみで40倍加速することを見いだした。また、核酸からならデバイスの弱点であるヌクレアーゼによる分解から、共重合体は保護する効果も見いだされた。共重合体が核酸間の相互作用は促進しつつ、タンパク質分解酵素からは保護するアダプティブな機能を有することがわかる。核酸デバイスの社会実装に極めて有用な知見である。 2,これまで脂質をシート状態で保持すること自体が課題であり、ベシクル・シート間の制御はさらに困難な課題であった。シャペロン高分子の分子設計により、pHや温度などの外部環境に自律応答し構造転移する脂質デバイスが実現された。共重合体はペプチドを活性な構造へとフォールディングするが、共重合体・ペプチド間の相互作用が、ペプチド・脂質膜間の相互作用を阻害せず、アダプティブな機能を発現していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き「生体分子だけでは実現不可能な機能を、自己組織化特性を厳密且つ柔軟・順応的(adaptive)に制御する材料設計」を推進するが、これまで共重合体に見いだされたadaptiveな機能性がどのように発現されているか、その機序にも注目する。また、adaptiveな機能は、多種の構成分子からなる異種の反応を連携させるより複雑な反応システムの実現にも不可欠である。そこで、異種の核酸間反応が連携する反応における共重合体の効果を検証し、共重合体のadaptiveな機能を向上させるための指針を得る。これらは、タンパク質フリー、定温で核酸をオンサイト検出する検査法として、感染症対策に欠かせない技術としての展開も念頭に置く。また、脂質デバイスに関しては、シート状態の脂質膜の特異性を、特に細胞認識、細胞取り込みの観点から推進する。
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