2021 Fiscal Year Annual Research Report
免疫誘導におけるマテリアル設計の本質解明を指向したリンパ節標的抗原キャリアの構築
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21H03822
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
弓場 英司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80582296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大崎 智弘 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40431332)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | pH応答性高分子 / リポソーム / 樹状細胞 / アジュバント / リンパ節 / アルブミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、pH応答性高分子の構造を最適化することでその抗原デリバリー機能とアジュバント作用を高めるとともに、リポソーム、もしくはpH応答性高分子に抗原タンパク質やアルブミンを結合させるための基礎的検討を行った。最適化したpH応答性高分子を修飾したリポソームは、樹状細胞を効果的に活性化するとともに、担がんマウスへの投与によって腫瘍を強力に縮退させた。pH応答性高分子とタンパク質を結合させるため、pH応答性高分子のカルボキシ基にジアミンを反応させた。また、モデルタンパク質を2-イミノチオランと反応させることでチオール基を導入し、両者をヘテロ2官能性リンカーを用いて結合させることを試みたが、ベースとして用いた多糖(カードラン)の分子量がタンパク質に比べて大きく、反応効率が著しく低いことが判明した。一方、リポソームに対してタンパク質を結合させるため、マレイミド基を有するPEG脂質をリポソームに組み込み、チオール基を導入したタンパク質と反応させることで、リポソーム表面にタンパク質を導入することに成功した。しかし、PEG脂質の組み込みは、樹状細胞との相互作用を著しく低下させ、pH応答性高分子のもつアジュバント作用を低下させた。 またpH応答性高分子修飾リポソームにがん罹患犬の腫瘍細胞のライセートを封入し、定期的に皮下投与したところ、一部のがん罹患犬において腫瘍成長の抑制が確認されたことから、当該技術の獣医療における有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、pH応答性高分子の構造最適化と、タンパク質結合のための基礎的検討、およびpH応答性高分子修飾リポソームの獣医療への展開を進めた。従来用いていた直鎖型多糖(カードラン)に比べ、分岐を有するアクアβを主鎖に用いることで、pH応答性高分子のアジュバント作用が劇的に向上することを見出した。また、pH応答性高分子、もしくはリポソームへリンパ節移行性を付与させるために、タンパク質の結合反応を検討したが、pH応答性高分子への直接結合においては、その高分子量からタンパク質との結合効率が極めて低いことが判明した。またリポソームへのタンパク質結合には成功したが、PEG導入による細胞との相互作用低下にともなって、抗原デリバリー機能・アジュバント作用が低下してしまったため、今後pH応答性高分子との結合スキームの見直しと、PEGを使用しないリポソームへのタンパク質結合方法の検証が必要であることが分かった。 pH応答性高分子修飾リポソームへのがん罹患犬由来腫瘍ライセートの封入に成功し、その投与による腫瘍成長の抑制効果が確認されたことから、本リポソームが腫瘍ワクチンとして有望であり、マウスのような小動物だけでなく、大型動物に対してもがん免疫を活性化できることが示唆された。 このように、本年度予定していたリンパ節移行促進のための材料設計については計画の見直しが必要となったが、リポソームの獣医療への応用に関しては当初の計画以上に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、pH応答性高分子もしくはリポソームへのタンパク質結合に関して課題が発見された。今後は、pH応答性高分子もしくはリポソームのタンパク質のコンジュゲーションに関して種々条件検討を行うとともに、万が一両者が想定通り進まない場合には、アジュバント作用をもつ分子とアルブミンとの結合について検討する。例えば、多数のアミノ基をもつポリアミドアミンデンドリマーにアジュバント作用を付与するためにpH応答性官能基を導入するとともに、残存アミノ基を利用してアルブミンとの結合が実施できるのではと考えている。デンドリマーはタンパク質とも同等の分子サイズをもつことから、分子量の大きいpH応答性高分子や、サイズ自体が相当大きいリポソームに比べて、アルブミン融合によるリンパ節移行を検証するための材料として、より適しているのではないかと考えられる。本研究課題の目的は、リンパ節移行型抗原キャリアシステムの開発と、それらによる免疫誘導を行うとともに、材料パラメータと免疫応答の関係性を理解することであるため、pH応答性高分子やリポソームだけにとらわれず、リンパ節移行を確実に検証するための材料設計を進める。 獣医療への展開については、2021年度に成功したライセート封入pH応答性高分子修飾リポソームを用いて、症例数を着実に増やし、リポソームの有効性の検証をさらに深めるとともに、上記のリンパ節移行型抗原キャリアが作製でき、マウスを用いた実験で成功した場合には、当該システムの獣医療への展開についても検討を行う。
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Research Products
(17 results)