2021 Fiscal Year Annual Research Report
Resuscitation from hemorrhagic shock by carbon monoxide- and oxygen-carrying capacities of artificial red cells.
Project/Area Number |
21H03824
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
酒井 宏水 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (70318830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松平 崇 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20570998)
山本 惠三 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90254490)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人工酸素運搬体 / 輸血代替 / 虚血再灌流障害 / 一酸化炭素 / 組織酸素化 / 蘇生液 / 出血性ショック |
Outline of Annual Research Achievements |
人工赤血球「ヘモグロビン ベシクル, HbV」は、高純度・高濃度ヒトHbを脂質膜(リポソーム)で包んだ微粒子であり、体内での高い酸素運搬機能が実証されている。しかし、出血性ショックの救命蘇生において、再灌流傷害を如何に抑えるか、また輸血治療までの繋ぎとして酸素運搬機能をどこまで持続できるかが課題である。本研究では、一酸化炭素(CO)を結合させたCO-HbVを投与し、COの徐放により再灌流傷害を「安全に」緩和しつつ、COを徐放して変換されたO2-HbVの酸素運搬機能を長時間維持する方法を検証し、出血性ショックに対する新規蘇生法として提案することを第一の目的としている。
令和3年度はCOの神経毒性を精査した。ラットにCOガスを吸入させて作成した"CO中毒モデル"に比較して、CO-HbVの静脈内負荷投与(循環血液量の50%)では、意外にもCO毒性を示唆する兆候は無く、脳海馬の病理組織学的検討(H/E染色、8-OHdG免疫染色)の結果、海馬組織に病理学的変化は無く、壊死細胞数も殆ど増加していなかった。また、出血性ショック蘇生試験において、脳海馬の壊死細胞の数がCO-HbVの投与で軽減された。COの毒性が見られないのは、主にCOの投与法(吸入 or 静注)の違いによる効果と考えられ、さらに虚血再灌流障害が低減する効果も得られた。これらの結果は年度末に論文発表(Artif. Cells Nanomed. Biotechnol. 2022)することができた。遊離したCOの毒性が無いことについては、今後も継続して慎重に精査をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COを結合したHbVの投与試験(ラット)から、COの海馬領域における毒性が見られないことが明らかになった。さらに出血性ショック蘇生試験においても、虚血再灌流障害を低減する効果が得られ、これらの結果を論文として発表することができた。また、研究協力者らにより動物モデルを用い、CO-HbVのその他の効能についても明らかになり、論文に掲載され、CO毒性の有無を明らかにする本研究の重要性を再認識するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
CO毒性については継続して脳神経系への影響を見極める実験を慎重に実施する。ラットに対し、CO-HbVを尾静脈内投与し(16, 32 mL/kg b.w.)、経時的に機能観察総合評価(FOB)、体温測定、感覚応答検査、着地開脚幅測定、握力測定を実施し、既に試験済みのO2-HbVと比較し、中枢神経系への影響を精査する。現段階ではCO毒性に関わる異常は一切認められていないが、海馬組織の検査結果も加え、研究協力者との議論も重ね、令和4年度中にまとめて論文投稿を行いたい。また、虚血性疾患モデル(ラット)を用い、CO-HbVの投与による効能を明らかにする。
O2-HbVに変換された後、Hbの自動酸化(メト化)により酸素運搬機能が漸減するので、新規電子メディエータにより赤血球解糖系が産生する電子エネルギーを引き出してメト化を抑制し、酸素運搬機能の持続性を飛躍的に向上させることについても検討を開始する予定である。NADHとHbO2の共存による擬似カタラーゼ・SOD活性の機序を明らかにすることを目的とし、NADH/HbO2共存系の結晶構造解析を行うため、結晶作成の可否を検討する。
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Research Products
(15 results)