2021 Fiscal Year Annual Research Report
小学校算数科における演繹的な説明構成力の研究;仮言的三段論法に着目して
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21H03926
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
赤川 峰大 神戸大学, 附属学校部, 副校長
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 仮言的三段論法 / 演繹的推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
学習指導要領(文科省,2017)では,資質・能力の育成を図る教育の重要性が指摘されている.とりわけ算数・数学教育における演繹的推論を働かせた「筋道立てて考え,表現する力」は,数学で扱う論理の基盤として重要視されている.しかし,その力が特に要求される中学校の図形の証明問題の正答率が低い(平成29年度全国学力・学習状況調査【中学校】45.0%)ことが示すように,育成の難しさがかねてより指摘されてきた.そのため近年,小学校算数科の「説明」を数学の「証明」の萌芽と捉え,系統的に育成しようとする動向がある.しかしその系統性が十分明らかになっていないため,小学校現場において目的の希薄な算数科の説明活動が散見される状態になっている.その改善のために,系統性として「仮言的三段論法(推移律)」に着目し,系統的育成の可能性を研究している. 仮言的三段論法とは,命題「P1ならばP2」「P2ならばP3」から「P1ならばP3」という結論を推論規則によって導く演繹的推論であり,国内外の主要な先行研究(Yang,2008等)において仮言的三段論法は,演繹的に論理を構成するために必要な要素として位置付けられている.一方小学校段階の説明はカリキュラム上の位置付けがないため,児童は仮言的三段論法を用いた構成について明示的に学習していない.この個人差が中学校段階における「証明」を構成することに関する課題につながっている可能性が指摘できる. 研究期間(1年)では,小学校の算数題材にも仮言的三段論法が内在する題材を同定し,教材化したことが主な成果である.調査問題の構造は仮言的三段論法に関わる説明の必要性を児童に考えさせるものある.今後は,本調査問題を用いた調査を実施することで,児童の仮言的三段論法の理解に関わる実態を明らかにしたり,本題材を用いた実践を行ったりすることで,児童の理解を深める取組につなげたい.
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