Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
本研究では、脳すら獲得していない刺胞動物のヒドラをモデルとし、線虫・ショウジョウバエ・マウスで保存されている睡眠制御因子のSIK3が最古の睡眠制御因子の一つである可能性を検証した。ヒト培養細胞やマウスなどで実績のある既存のSIK3の阻害剤で処理したヒドラの睡眠を測定した結果、ヒドラの睡眠量が減少することが明らかとなった。これは、他の動物での報告と同じように、SIK3がヒドラの睡眠を促進するように機能していることを示唆している。つまり、SIK3は刺胞動物のヒドラの段階ですでにその分子構造や機能が確立されていることを意味しており、SIK3が睡眠制御因子の一つである可能性は十分考えられる。
動物生理学
睡眠はヒトのQOLに直結することから、その分子基盤などの詳細を解明することは重要である。これまで数多くの動物で睡眠現象が見出されているものの、その進化的な起源は明らかとされていない。もし進化的な起源が明らかとなれば、睡眠制御における最も中心的な要素を見極めることにつながり、そこから睡眠が紐解ける可能性がある。本研究成果はSIK3を中心とした睡眠制御機序が睡眠制御の根幹に相当する可能性を示唆しており、ヒトの睡眠を理解する上で重要な一歩となった。