2021 Fiscal Year Annual Research Report
p62マロニー小体:肝細胞がん細胞におけるその性質と意義
Project/Area Number |
21H04163
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小松 聡子 順天堂大学, 医学部, 技術員
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マロリー・デンク体 / p62 / 液―液相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
マロリー・デンク体(MDBs)は、1911年に病理学者フランク バー マロリー博士によりアルコール性肝炎患者の肝細胞内に蓄積する球状の好酸球性の構造体として発見された。その後、アルコール性肝炎のみならず、非アルコール性肝炎や肝細胞がんなど広くヒト肝疾患において確認されることが分かった。しかし、発見以来100年以上、MDBsの病態生理的意義はほとんど解明されていない。ごく最近、代表者のグループは、MDBsは液滴(液―液相分離により形成される非膜型オルガネラ)形成能を持つ選択的オートファジーレセプタータンパク質p62が主成分であること、p62液滴はオートファジーや抗酸化ストレス活性化の足場となることを発見した。本研究では、肝細胞がんにおけるMDBsの性質の一端を明らかにし、肝がん細胞の生存戦略機構にMDBsが関与するか否かを明らかにすることを目的とした。肝細胞がん株Huh-1細胞よりマMDBsと考えられるp62陽性液滴・ゲルの精製方法を確立し、質量分析により精製p62液滴・ゲルに含まれるタンパク質群の同定を行った。その結果、p62液滴・ゲルには、ユビキチンやKEAP1といった既存のタンパク質の他に、NBR1やTAX1BP1といった選択的オートファジーレセプタータンパク質が含まれることがわかった。実際、二重免疫染色法、二重免疫電子顕微鏡法解析によりNBR1やTAX1BP1がp62液滴・ゲルに局在すること、蛍光退色後回復測定法によりp62やNBR1がp62液滴・ゲル内において比較的遅い内部流動性を呈したのに対し、TAX1BP1は極めて早い内部流動性を示すことがわかった。NBR1はp62に、TAX1BP1はNBR1に結合することが報告されているが、p62液滴・ゲル内ではそれぞれが異なる機能を持つことが示唆された。
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