2021 Fiscal Year Annual Research Report
ボリコナゾール長期投与によって代謝酵素の自己誘導は起こるのか
Project/Area Number |
21H04209
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
小玉 菜央 鳥取大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ボリコナゾール / TDM / 自己誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:抗真菌薬のボリコナゾール (VRCZ) は、効果および有害事象と血中濃度に関連性を認めるため、治療薬物モニタリング (TDM) の実施が推奨されている。しかし、2016年発行の抗菌薬TDMガイドライン改訂版において、投与量および血中濃度安定後の定期的なTDMの方法について一定の見解が得られていない。鳥取大学医学部附属病院のVRCZ長期使用患者において、有効血中濃度を維持するために投与量を増量しても血中濃度が上昇せず低下した症例やVRCZとその主要代謝物であるN-オキシド体(VNO) の血中濃度比が経時的に上昇した症例を経験した。VRCZ長期使用患者の血中VRCZ濃度低下および血中VNO濃度の上昇が、VRCZの代謝酵素の自己誘導に起因する可能性について検討することとした。 研究方法:細胞はヒト初代肝細胞に機能が最も近いとされる肝細胞セルラインのHepaRG細胞を用いた。HepaRG凍結バイアル (HPR116) 操作手順書に従い、VRCZ存在下/非存在下で最大28日間培養した。培地中のVRCZ濃度は1―100 μg/mLとし、HepaRG細胞を経時的に回収した。Cytochrome P450 (CYP) の分子種のうち、VRCZの代謝に関与するCYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4について、Real-time PCR 法を用いて mRNA の発現量を測定し、⊿⊿Ct法にて解析した。 結果・考察: HepaRG細胞は28日間培養が可能であり、代謝酵素のmRNA発現が確認された。また、上記3種の薬物代謝酵素のmRNA発現量は、VRCZ非添加群および低濃度(1 μg/mL)群では同じ挙動を示した。10 μg/mLの群では経時的にCYP2C9のmRNA発現量が増加し、高濃度(100 μg/mL)群では経時的にCYP3A4のmRNA発現量が増加した。しかし、VRCZ濃度依存的な発現量の増大は認められなかった。その原因の一つとして、専用培地中に含まれる成分により誘導効果が過小評価されている可能性が考えられる。CYP3A4の誘導効果については、今後機能性を評価していく。
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