2021 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん剤誘発精神機能障害発現機序に基づく釣藤鈎含有漢方薬の治療機序の解明
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21H04237
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩田 直大 岡山大学, 大学病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 釣藤鈎 / 抗がん剤誘精神機能障害 / 明暗探索試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的:抗がん剤治療中に精神機能障害が生じることが問題となっており予後に大きく影響する。近年、抗がん剤投与ラットは5-HT1A受容体に対し5-HT2A受容体が優位となり、不安が惹起されることが明らかとなった。釣藤鈎は5-HT1A部分受容体作動作用、5-HT2A受容体拮抗作用などのモノアミン神経伝達の増強など多重作用メカニズムにより抗不安作用・ 抗うつ作用を持つことが明らかとなっている。我々はこれまで、釣藤鈎を含有する抑肝散を反復投与することにより、抗がん剤誘発精神機能障害に対する有効な予防薬になり得ることを示唆した。本研究では、釣藤鈎含有漢方製剤の抗がん剤誘発精神機能障害に対する治療効果およびその機序について明らかにする。 研究方法:Wistar系雄性ラットを用い、乳がん標準治療薬であるドキソルビシン(5 mg/kg, i.p.)・シクロホスファミド(50 mg/kg, i.p.)(以下、AC)をday1およびday8に投与した抗がん剤誘発中枢神経障害モデル動物を作成した。AC最終投与から1週間後に釣藤鈎(0.1 g/kg)、抑肝散(1 g/kg)、釣藤散(1 g/kg)を単回経口投与行った後、翌day15に不安行動を評価する明暗探索試験を実施した。明暗探索箱に入れたラットの10分間の明室への進入時間を測定した。また、漢方薬投与前に5-HT1A受容体拮抗薬WAY100635を併用した。 研究成果:釣藤鈎、釣藤散および抑肝散の単回投与では、AC投与による明室進入時間低下の抑制はみられなかった。また抑肝散の反復投与に対してWAY100635を併用したところ、抑肝散の効果に影響はみられなかった。抑肝散は反復投与によりAC投与後のラットの精神機能障害を抑制し、5-HT1Aよりも他の5-HT受容体に関与することで抗がん剤による精神機能障害に対する有効な予防薬になり得ることが示唆された。
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