2022 Fiscal Year Annual Research Report
Enlightenment - Narrative - Conspiracy: Comparative Studies on Social Change and its Narrative Structure in the 18th Century Europe
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21H04340
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 渉 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20314411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井奥 陽子 東京藝術大学, 美術学部, 研究員 (60836279)
久保 昭博 関西学院大学, 文学部, 教授 (60432324)
後藤 正英 佐賀大学, 教育学部, 教授 (60447985)
多久和 理実 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 講師 (20814718)
武田 将明 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10434177)
濱本 真実 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (00451782)
増田 都希 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特任講師 (50760633)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 18世紀 / 啓蒙 / 物語 / ナラティヴ / 陰謀論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、啓蒙期のナラティヴという問題を〈陰謀論〉を視軸に検討する作業を進めた。具体的には、1780年代のプロイセンで(主にプロテスタント系)知識人層に影響力をもった「旧イエズス会士の陰謀論」の展開を調査した。17世紀初頭の『秘密の指示書(Monita secreta)』が偽書であることが忘却され(あるいは意識的に無視され)18世紀を通じて幾度も再版されている様子を詳しくたどることができた。 平行して〈物語/ナラティヴ〉がさまざまな分野で使用される際、どのような意味や含意の差異が見られるかを、代表的事例をとりあげつつ考察した。具体的には、R. J. シラーのナラティヴ経済学、A. クラインマンの「病いの語り」、J. ゴットシャルのストーリーテリング、J.-F. リオタールの「大きな物語」といった事例である。 ここでの課題は、文学研究に見られるナラティヴ概念との差異を明確にすることである。ナラトロジーや文学的物語研究においては、語り手が通常架空の「すでに起きた」出来事を語るという事実に着目し、視点・人称や時間的構造といった側面から詳細な分析をおこなう。それに対し、上に挙げたようなナラティヴの事例の多くは、「これから起きる(かもしれない)」出来事が主となり、その可能性や懸念が聴き手/読み手になんらかのレスポンスを促す、という点で共通している。こうした点についてさらなる検討を進めることが今後の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響もおさまり、国外での資料収集もほぼコロナ前と同様におこなえるようになった。陰謀論の問題についても、また、ナラティヴの概念的検討についても、おおむね順調に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
物語・ナラティヴの理論的研究において、また、特に陰謀論に関連する問題についても、これまでの部分的成果については、シンポジウム、ワークショップなどの積極的開催によって、さまざまな角度からの検討を加えることで、研究成果のとりまとめを促進していく。
また、研究代表者や研究分担者ではなかなか手の回らない調査点については、若手研究者(指導大学院生を含む)に委託するなどし、資料調査や情報集約と報告をおこなわせることも検討したい。
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Research Products
(1 results)