2022 Fiscal Year Annual Research Report
材料科学および工芸技術からみた古墳出土金工品の総合的研究ー藤ノ木古墳を中心にー
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21H04369
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 総括研究員 (90421916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊島 直博 奈良大学, 文学部, 教授 (90304287)
諫早 直人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
加藤 和歳 九州歴史資料館, 文化財企画推進室, 研究員(移行) (80543686)
北井 利幸 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 指導研究員 (70470284)
河崎 衣美 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 主任研究員 (60732419)
水野 敏典 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 課長 (20301004)
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 課長 (10250375)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 材料科学 / 工芸技術 / 藤ノ木古墳 / 古墳時代 / 金工 |
Outline of Annual Research Achievements |
1986年の発掘調査により王権中枢部関係者が埋葬されたと考えられる古墳時代後期の藤ノ木古墳から、副葬品として当時、列島内において最高級の金工品が出土し、それらの科学的な調査が実施された。しかし、その調査は金工品全てではなく、部分的であり、その成果は限定的であった。また、古墳時代の金工品は5世紀以降、急激にその数を増やす。この時代は、中国大陸や朝鮮半島を通じて材料選択から製作に関わる多様な知識と技術を移入し、列島内独自の技術へと成熟、発展させた。 古墳時代の金工品の研究は、海外との人や技術、モノの往来に関する交流や国内におけるモノや技術の移動、技術史的な視点からの研究が盛んに行われている。一方で、材料学的研究と製作に関する技術的研究が相関した研究は、一部の古墳出土品で行われているものの網羅的には行われていない。 本研究の目的は、奈良県藤ノ木古墳出土品など日本の古墳から出土した金工品に対し最新の研究技術を駆使することによって、それらに遺された痕跡から、使用された材料・技術を明らかにし、材料確保に係る流通や技術導入に係る交流、技術の定着・発展に関する研究を行い、これからの工芸技術研究や考古学研究、材料学研究に資する研究基盤構築につながる総合的研究を行うものである。 本研究では藤ノ木古墳出土の金工品に加えて古墳時代後期を代表する上塩治築山古墳(島根県)等から出土した金工品の材質と工芸技術を仔細に調査・分析を行い、海外からの移入技術を古墳時代後期に独自に昇華させた金工品と技術者の特質を抽出する。本研究は、日本が技術大国として今に至る礎の工芸技術と技術者魂、いわゆる「匠の技」の解明が目的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、研究の2年目であり本格的な研究を進めた。藤ノ木古墳出土品は金銅冠や金銅飾履、金銅筒形品を中心に調査を実施した。また、昨年度より取り組んでいる出雲市上塩冶築山古墳出土品および国富中村古墳出土品を中心に熟覧、顕微鏡観察、透過X線撮影、蛍光X線分析、高精細三次元形状計測などを計画的に実施し、金銅装に関する技術や使用材料に関する材料学的な新知見が得られた。また、福岡県宗像大社沖ノ島祭祀遺跡出土品の調査を進めるための情報収集と調査に係る調整を行った。 個別に視点を置けば、刀剣類については、九州地方や関東地方を中心に広く金銅装円頭大刀と鉄地銀象嵌円頭大刀の資料調査を行い、藤ノ木古墳出土円頭大刀と比較する材料を得た。また、圭頭大刀に関する見解をまとめた論文を執筆し、百済の円頭大刀が圭頭大刀に影響を与えたことを論じた馬具に関しては、後期古墳から出土した馬具をはじめとする金工品について所蔵機関において資料調査をおこなった。また広島県竹原市横大道1号墳出土馬具に対する調査成果をもとに初期仏教工芸技術と装飾馬具製作技術の関係性について検討をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、前年度に引き続き奈良県藤ノ木古墳出土品および出雲市上塩冶築山古墳出土品のほか、福岡県宗像大社沖ノ島祭祀遺跡出土品を加えて調査・研究を実施する。馬具の他、武器等に対して熟覧、顕微鏡観察、透過X線撮影、蛍光X線分析、高精細三次元形状計測などを実施し研究基盤作りを進める。
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