2023 Fiscal Year Annual Research Report
材料科学および工芸技術からみた古墳出土金工品の総合的研究ー藤ノ木古墳を中心にー
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21H04369
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
奥山 誠義 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 総括研究員 (90421916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 課長 (10250375)
水野 敏典 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 課長 (20301004)
河崎 衣美 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 主任研究員 (60732419)
北井 利幸 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部企画課, 指導研究員 (70470284)
加藤 和歳 九州歴史資料館, 文化財企画推進室, 研究員(移行) (80543686)
諫早 直人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
豊島 直博 奈良大学, 文学部, 教授 (90304287)
平井 洸史 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部学芸課, 主任技師 (50884251)
中尾 真梨子 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任技師 (10964934)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 材料科学 / 工芸技術 / 藤ノ木古墳 / 古墳時代 / 金工 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き奈良県藤ノ木古墳出土品および出雲市上塩冶築山古墳出土品等を中心に研究を進めた。出土品の熟覧、顕微鏡観察、透過X線撮影、蛍光X線分析、高精細三次元形状計測などを計画的に実施し、金銅装に関する技術や使用材料に関する材料学的な新知見が得られた。 特に上塩冶築山古墳出土の金銀装捩環頭大刀は、鞘が木製でその上(鞘の木の上)に布がまかれていた。その布には赤色顔料(水銀朱)が塗られており、鞘が赤く見える構造を呈していたことが確認できた。これは全国で初めて確認した例であり「赤鞘の大刀」と称されることとなった。この成果は、出雲弥生の森博物館春季企画展「科学の力で解き明かす出雲の歴史」を開催し、一般に向けて本研究の2カ年の成果と共に公開した。 また、藤ノ木古墳出土品との比較資料として調査対象になる福岡県船原古墳出土品の中でも金銅製馬具を対象にX線CT、蛍光X線分析による構造技法解析の成果について、特徴や意義をまとめ、特別展および展示図録にて公開した。また、福岡県日明一本松塚古墳、福岡県新延大塚古墳、長崎県笹塚古墳、宮崎県伝西都原古墳群の出土金銅製馬具を対象にX線CTによる構造技法調査を行った。さらに船原古墳出土金銅生馬具や長崎県笹塚古墳出土品等の高精細三次元形状計測を実施し、詳細な形状情報を取得した。 昨年度より調査に係る調整を進めてきた福岡県宗像大社沖ノ島祭祀遺跡出土品については、本格的な調査に着手し、金銅製人形の観察および材料分析を実施すると共に、杏葉等について観察および高精細三次元形状計測を実施した。 刀剣類については、宮崎県千畑7号墓出土圭頭大刀、佐賀県妻山4号墳出土圭頭大刀、長崎県百田頭2号墳出土圭頭大刀等、九州地方の装飾付大刀について資料調査を行い、藤ノ木古墳出土大刀と比較検討する素材を得た。研究成果の一部は『装飾付大刀の生産と流通に関する研究(Ⅲ)』に取りまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外部研究機関との調整は計画通りに進行している。今年度調査計画も既に検討済みであり、実施するのみである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、前年度に引き続き奈良県藤ノ木古墳出土品および出雲市上塩冶築山古墳出土品、福岡県船原古墳出土品のほか、福岡県宗像大社沖ノ島祭祀遺跡出土品を加えて調査・研究を実施する。馬具の他、武器等に対して熟覧、顕微鏡観察、透過X線撮影、蛍光X線分析、高精細三次元形状計測などを実施し研究基盤作りを進める。刀剣類ついては、構造的な詳細な研究を進める。
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