2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H04396
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中村 良太 一橋大学, 社会科学高等研究院, 教授 (00717209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井深 陽子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20612279)
YAO YING 一橋大学, 社会科学高等研究院, 特任講師 (30810915)
Khin Thet・Swe 一橋大学, 社会科学高等研究院, 特任助教 (90881722) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 医療経済学 / 医療政策 / 費用対効果 / 因果推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本、ブータン、シンガポールにおける医療費と健康に関する行政データを用いて健康機会費用を定量化する研究を進めた。それぞれの国全体における医療資源配分の効率化に資する分析を行うため、悉皆性もしくは代表性のある医療費および健康アウトカムのデータ構築が必要である。 まず日本において、国民医療費を把握すべくデータの構築作業を進めた。具体的には、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベースの利用申請作業を行った。この作業を進めるにあたり、申請書作成等の作業が専門的であることが判明し、研究補助員の雇用を取りやめて申請作業に経験・知見のある外部機関への委託によって作業を進めた。また、国民の健康状態の指標として死亡率に着目し、人口動態統計個票の利用申請作業を進めた。 ブータンでは、同国保健省との協働により、内務省が保管する過去10年の一次医療圏ごとの死亡・疾病発生状況や、保健省のHealth Information and Service Centersと財務省が管理する全ての医療機関への予算配分等のデータを収集・整理する作業を進めた。また、保健省と議論を行い、費用対効果の閾値の定量化として別のアプローチによる定量研究も行うことになった。具体的には、国民の健康への支払用意額を推定することによる閾値の導出を行うことになった。この実施に向けて、既存文献のレビューや方法論の取りまとめを行った。 シンガポールにおいては、国内の医療費と政府の医療支出データ、内務省の戸籍情報の死亡率に関する匿名データ、及びSingapore Population Health Studiesのデータを利用して分析用データを構築すべく、保健省に対してデータ利用申請の作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の国民医療費を把握すべく、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベースの利用申請作業を行ったが、申請書作成において高度に専門的な知識が必要であることが判明したため、当初計画を変更し、研究補助員(大学院生)の雇用を取りやめて外部機関への委託に切り替えた。このため研究費の使途に変更が生じたが、研究自体の進捗状況への影響はなかった。国際共同研究実施のためのネットワーク維持と拡大のため、SAPPHIREの年次会合をオンライン開催し、現行の共同研究や今後の協力について議論を行った。 ブータンにおいては、新型コロナウィルス感染症対策により保健省職員が同省に通勤できなくなってしまい、同省からしかアクセスできないデータを取得するのが遅れた。具体的には、同国における医療費や疾病発生等の健康アウトカムデータの取得が遅れた。取得したデータを現地で整理せず、日本において研究補助員を雇用してデータ整理を行うことで研究遂行への影響を最小化した。健康(質調整生存年)への支払用意額の推定は当初計画にはなかったが、計画されていた健康機会費用との関連が強く、また保健省にとっても一つのアプローチにより得られた閾値に依拠するよりも、複数のアプローチにより閾値を導出して、推定の頑健性や一般可能性に配慮した政策意思決定を行うことが重要であるため、追加でこの研究を行うことにした。渡航制限により海外渡航がキャンセルされており、渡航費分の予算をこの研究に充てることにより実施できると判断した。 シンガポールにおいては、渡航制限の影響により現地でデータ利用申請作業を行うことができないため、同国の共同研究グループに作業を一任している状況である。ただ、これにより研究の進捗状況への影響は顕在化していない。
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Strategy for Future Research Activity |
健康機会費用の推定による費用対効果の閾値の導出に関する研究では、諸外国での研究実施例がいくつか出てきており、また英国において複数のアプローチによる閾値の導出が進んでいるので、これらの関連研究をレビューし、最新の研究動向を注視しつつ研究を進める。 日本においては、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベースの利用申請作業を進め、本申請を行う。本申請において申請が承諾されることを前提に、外部委託業者と連携して分析用データのフォーマットやサイズ等についての検討を行う。人口動態統計個票の利用申請に関しても、本申請に向けて利用申請書の最終化を行う。 ブータンにおいては過去10年の一次医療圏ごとの死亡・疾病発生状況や、保健省のHealth Information and Service Centersと財務省が管理する全ての医療機関への予算配分等のデータの収集と整備の作業を継続して行う。健康(質調整生存年)への支払用意額の推定では、同国において2023年に実施予定である国民健康調査への質問票の追加を検討している。本調査は政府が主導して全国で実施される代表性のある大規模調査である。 シンガポールにおける分析では、新型コロナウィルス感染症対策による渡航制限等の動向を注視しながら、共同研究者と調整しつつ、状況が許せば同国に渡航してデータ利用申請やデータの整備等の作業を進めたい。 タイにおいて、過去2回にわたり費用対効果の閾値が変更されており、これを準実験として捉えて、閾値を変更したことにより医療資源配分への影響についての実証研究を計画している。同国の共同研究者やNational List of Essential Medicine Committeeと協働しつつデータの収集および利用申請等の作業を進める。
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