2021 Fiscal Year Annual Research Report
網膜病変に対する知覚的補正メカニズムの研究と臨床検査への展開
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21H04424
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 裕之 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (40243977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 康平 九州大学, 医学研究院, 教授 (10294943)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 盲点 / 網膜 / 錯視 / 暗点 |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜病変がない人の生理的暗点である盲点の可視化を試みた。広域の視野を高輝度のフリッカーで刺激すると、右目では視野の右、左目では視野の左にダークグレーの楕円状の領域が見えるのを発見した。この見えには個人差があり、全員に見えるわけではなく、現在被験者の数を多くして観察実験を行っている。この過程で、同じ視野に網膜上の血管が見える被験者もいることがわかった。次年度は、盲点や血管が見える条件を詳しく調べる。 網膜病変による暗点部分の視野の補填を調べるため、錯視的な対象の出現が知覚されるvisual saltation 錯視を暗点に生じさせることを想定し、この錯視の特性を調べた。その結果、連続して提示される3つの対象のSOAが短いほど、評定された錯視量が大きくなった。また、どの時間条件においても、カニッツァタイプの主観的輪郭の方が、輝度で定義された図形よりも錯視が強いこともわかった。今後、暗点が明確になっている被験者に対して、この実験を行い、暗点の位置において錯視的な対象の出現が知覚されるのかを確かめる。 片眼の視野のゆがみによって生じることが想定される両眼立体視による奥行きのゆがみを、他の奥行き手がかりが補正している可能性を想定し、どのような映像や奥行き手がかりが立体視を変化させるのかを調べ、線遠近法となる収束する線分の強い効果が確認された。他にも、研究の過程で新たな錯視を発見した。次年度以降、これらの錯視が視野の歪みの影響でどのように見えが変化するかを検討する予定である。放射線状の高コントラストの縞パタンを網膜上で高速で滑らかに移動させると、輝度のフリッカーが生じ、放射パタンの中央部分から明るい輝きが広がる錯視を発見した(挑戦的研究(萌芽)21K18561との連携において調査している)。白黒の短い線分をグレー背景上に提示すると、実際の傾きとは逆方向に傾いて見える錯視を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた学術研究員の雇用が遅れたため、計画全体がやや遅れている。代わりに大学院生のリサーチアシスタントを雇用して、遅れを軽減する方策をとった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策について、特に変更点はない。網膜上の刺激によって起こる錯視が新たに発見された場合は、その特性を調べると共に、網膜病変部分におけるその錯視の見えの変化を測定する。
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Research Products
(5 results)