2023 Fiscal Year Annual Research Report
Exploration of Energy Frontier in Cosmic Gamma-ray Observations
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21H04468
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田島 宏康 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (80222107)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | ガンマ線 / 宇宙線 / 放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々のグループは、CTA小口径望遠鏡に採用された半導体光電子増倍素子の開発、調達、較正に責任を持つ。2023年には、小口径望遠鏡の初号機用に納入された半導体光電子増倍素子モジュールの規格外品を活用して暗電流の長期測定を実施した。その結果、64個の半導体光電子増倍素子の暗電流の平均値の変動のは1%以下であり、背景光による電流が暗電流の10倍であることも考慮すると、観測への影響はないことを確認した。また、測定した64個の半導体光電子増倍素子のうち、10個の半導体光電子増倍素子で暗電流が一定の間隔で遷移するマルチモーダルな振る舞いを示すことがわかった。これは、半導体光電子増倍素子の特定の増幅セルが一定の遷移幅で増減を繰り返す現象として理解できる。その遷移幅は10%程度あるが、背景光による電流変化と比較して十分に小さく、観測への影響はないと結論づけられる。 さらに、長期測定開始後約100日目に、半導体光電子増倍素子の1つで暗電流が10倍に増加する現象があった。一般にこのような暗電流増加があると、半導体光電子増倍素子の特定の箇所で発光現象が見られるが、この半導体光電子増倍素子ではそのような発光は検出できなかった。また、電流の電圧依存性も抵抗のような比例関係にあり、かつ温度依存性もシリコンとは逆となっているため、半導体光電子増倍素子モジュール上の半導体光電子増倍素子以外の部品の故障に起因する可能性が高い。さらに、ダークカウントレートを測定したところ、普通の半導体光電子増倍素子と同等であったため、暗電流の増加はダークカウントの増加に起因しないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、半導体、電子回路関連の資材不足により、全体として部品の製造工程に遅れが発生したため、名古屋大学が担当する半導体光電子増倍素子は、モジュールの調達までしか進まなかった。それを受けて、2023年度は初号機のカメラ製作にとりかかる予定であったが、他の研究機関が担当する信号処理回路の電子基板の調達に遅れが生じたため、カメラの組み立てにさらに遅れが生じている。 ただし、名古屋大学が担当する半導体光電子増倍素子の試験は予定通りに進んでおり、64個の半導体光電子増倍素子からなるモジュールについて、長期試験を実施し、素子が安定に動作することを検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度には、64個の半導体光電子増倍素子からなるモジュールについて加速劣化試験を実施し、平均故障間隔を測定する。その測定結果に基づいて、保守部品の数量などを決定する。並行して、小口径望遠鏡の初号機の8分の1カメラの組み立てを完了し、その性能を検証する。カメラの組み立ての際は、性能検証や較正をする必要があるため、その手法を確立する。 引き続き、2025年度中にカメラの組み立てを完了し、試験観測を開始する。試験観測では、現地較正手法の確立や月夜観測における検出器性能の評価に取り組む。月夜観測では、月の満ち欠けの具合や、観測天体と月の間の角度に依存した性能劣化を測定し、月夜観測における感度予想計算の基礎資料とする。
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