2022 Fiscal Year Annual Research Report
r過程天体環境解明に向けた新手法による未踏領域核の生成とその多角的精密核分光
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21H04479
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
平山 賀一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (30391733)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 もも 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (10823726)
宮武 宇也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (50190799)
渡邉 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50353363)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 元素合成 / レーザー核分光 / 精密質量測定 / 崩壊核分光 / 国際情報交換 / フィンランド / ベルギー / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
金、ウラン等の重元素を合成する速い中性子捕獲過程の起源となる天体環境の解明を目指し、中性子魔法数N=126近傍核の精密核分光を展開しつつ、短寿命核の収量増大のためドーナツ型低温ヘリウムRFガスセル試験、設計、製作および格納可能な大型真空槽の設計を行った。ドーナツ型低温ヘリウムRFガスセル開発として、Rbイオンを用いたオフライン試験でヘリウムRFガスセル用RFワイヤーカーペットの性能を調べ、その後、オンライン実験でRFワイヤーカーペットによる198Ptイオンの輸送・引き出しに成功した。前回よりもガスセルを低温に冷却することで不純物イオン生成を抑制し、短寿命核199Ptイオンの引き出しを確認できた。また今後の開発項目を見出すことができた。 安定したレーザー共鳴イオン化を行うために、老朽化したエキシマレーザーの代わりとなる新エキシマレーザーを共同で購入し、その設置と動作試験を行った。 多核子移行反応による短寿命核生成用標的として新たにイリジウム薄膜を用意した。この標的を用いて、短寿命核レニウム同位体のレーザー共鳴イオン化核分光を行い、生成量およびその精密質量測定をMRTOF-MSにて実施した。この結果は、2023年3月の日本物理学会にて発表し、投稿論文としてまとめている。KISSでのレーザー共鳴イオン化により中性子過剰ウラン同位体をイオンし、新たに242Uの質量をMRTOFで精密測定し、その結果を雑誌Physical Review Letterにて公表した。重元素合成の鍵となるウラン領域において核分光実験を展開し始めた。 SSRI-pns collaboration meeting、RIBF Users Meetingにて、KISSで行ったーザー核分光の結果、精密ベータ遅発ガンマ線核分光および質量測定について発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は、新たに用意したイリジウム標的を用いて、レニウム同位体、タングステン同位体等をこれまでよりも数倍多く生成することに成功した。生成した短寿命核の粒子識別と同時に精密質量測定をMROTOF-MSにて行った。また新規エキシマレーザー導入により、より安定かつ効率的にレーザー共鳴イオン化核分光を行える環境を整えた。理化学研究所と共同開催している実験課題採択委員会にて、レニウム同位体のレーザー共鳴イオン化核分光実験を提案し、グレードAにて採択された。このように未知中性子過剰核の多角的な核分光測定が着々と進んでいる。 核分光実験と並行して、短寿命核の収量増大を目指してドーナツ型低温ヘリウムRFガスセル開発を行った。昨年度に行った実験結果をもとに、ドーナツ型低温ヘリウムRFガスセル本体と内部構造(DC電極、RFワイヤーカーペットの配置)のシミュレーションにて最適化し、設計・製作した。このガスセルを格納する大型真空槽の設計も完了し、製作見積りを行った。しかしながら、当初の想定に反し、業者において真空チャンバーに必要な部品の調達が遅延していることにより、3月に納品予定の真空チャンバーが今年度中に納品されないことが判明した。研究遂行上、本研究で必要な仕様を満たす真空チャンバーの据え付けが不可欠であるため、業者と調整の結果、令和5年7月までに納品が可能となったため、真空チャンバーの据え付けを延期する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
既存のアルゴンガスセルによるレーザー核分光、精密質量測定および崩壊核分光実験による系統的かつ多角的な核構造研究を進める。タンタルおよびレニウム同位体のレーザー共鳴イオン化核分光実験、ハフニウム同位体の崩壊核分光実験を令和5年度前期に実施する予定である。 延期した大型真空槽の製作を令和5年度前半に完了させて、前期に予定している実験終了後の10月から設置作業を開始する予定である。その後、従来のアルゴンガスにてレーザー共鳴イオン化したイオンビームの引き出しを確認し、性能評価を行う。問題なければ、ヘリウムガスセルを設置して、加速器実験でN=126近傍核の精密質量測定を実施する予定である。
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[Journal Article] Discovery of New Isotope 241U and Systematic High-Precision Atomic Mass Measurements of Neutron-Rich Pa-Pu Nuclei Produced via Multinucleon Transfer Reactions2023
Author(s)
T. Niwase, Y.X. Watanabe, Y. Hirayama, M. Mukai, P. Schury, A.N. Andreyev, T. Hashimoto, S. Iimura, H. Ishiyama, Y. Ito, S.C. Jeong, D. Kaji, S. Kimura, H. Miyatake, K. Morimoto, J.-Y. Moon, M. Oyaizu, M. Rosenbusch, A. Taniguchi, and M. Wada
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Journal Title
Phys. Rev. Lett.
Volume: 130
Pages: 132502-1-6
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] In-gas-cell laser resonance ionization spectroscopy of 200,201Pt2022
Author(s)
Y. Hirayama, M. Mukai, Y. X. Watanabe, P. Schury, H. Nakada, J. Y. Moon, T. Hashimoto, S. Iimura, S. C. Jeong, M. Rosenbusch, M. Oyaizu, T. Niwase, M. Tajima, A. Taniguchi, M. Wada, and H. Miyatake
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Journal Title
Phys. Rev. C
Volume: 106
Pages: 034326-1-11
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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