2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of extremely radiation-damage tolerant beam window made of beta titanium alloy
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21H04480
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
石田 卓 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (70290856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
叶野 翔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (00742199)
牧村 俊助 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 技師 (10391715)
若井 栄一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主席 (20360422)
明午 伸一郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主席 (80354728)
涌井 隆 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 副主任研究員 (50377214)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | チタン合金 / 照射損傷 / ビーム窓 / 2次粒子生成標的 / 大強度陽子加速器 / ベータチタン / オメガ相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日米欧の加速器機関と原子力研究機関による国際協力研究RaDIATEと共同し、世界の先端陽子加速器施設の大強度化・高輝度化にとって重要な、標的やビーム窓材料の耐照射損傷性の向上を図る。特にJ-PARCやFNALニュートリノ施設の64チタン合金製ビーム窓に代わり、析出相をナノサイズで制御して照射損傷を無効化したβチタン合金製のビーム窓を新たに開発する。 東大原子力の重粒子照射施設HITで実施した照射実験により、準安定βTi-15-3合金は常温で10dpa以上まで照射硬化を起こさないことが明らかになった。Ti-15-3は一般に時効処理でα相を析出させ、高温での利用を可能としているが、Ti-64ほどではないが照射硬化が明確に観測された。通常の時効処理ではα相析出が粗大すぎるために逃げ場強度が弱まり耐照射損傷性が低下したためと考えられる。他方、低温から高温への2段階の時効処理(ST2A)によりα相析出を極微細化すると、300℃での耐照射性が維持され、ビーム窓用途に十分な性能を有することが明らかとなった。クリープ試験によりTi-64より耐熱性に優れていることも確認された。 Ti-15-3の大型丸棒材料を調達、据込鍛造による微細組織制御を実施した。得られた鍛造材の機械的性能に顕著な向上が認められたものの、その微細組織には動径方向に顕著な非一様性が認められ、微細粒域に囲まれた粗大粒域が残留する結果となった。この鍛造材を用いビーム窓の製造試験を実施し、0.39㎜薄肉部を持つ現行実機形状でのTi-15-3製ビーム窓を製造することに初めて成功した。ST2A熱処理による形状変化の影響は小さいことが分かりβチタン合金製ビーム窓の実現に向けた最初の大きな一歩となった。 成果について日米科学技術協力プログラム ハワイシンポジウム(ポスター賞受賞)、第20回核融合炉材料国際会議などにて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオンビーム照射試験により、βチタンTi-15-3合金の2段階時効処理(ST2A)材が目標とする300℃までの高温域で少なくとも10dpa程度まで照射硬化しないことを見出し、さらに最初の熱間鍛造処理により微細組織に改善の余地はあるものの、機械特性に優れた材料の製造に成功、現行ビーム窓と同形状のビーム窓の試験的な製造にも成功した。照射損傷を無効化したβチタン製ビーム窓開発に向けた大きな一歩となった。 実際にTi-15-3 ST2A材が耐照射損傷性に優れていることを確証するためには、照射硬化しないことに加え、照射により脆化しない(もろくならない)=延性(伸びて柔らかいこと)を維持しているかどうかが重要である。イオン照射実験は照射損傷を与える領域が極薄く、半日程度で局所的に大強度陽子ビーム照射の数年分にも相当する照射損傷を与えられるが、微小押込み試験器(ナノインデンタ)での硬度(硬度は材料の耐力に比例)評価までしかできなかった。有限要素法シミュレーションによる押込挙動の逆解析により、構造材料に重要な延性に関する情報を取得することを目指した解析が必要である。 最終的にTi-15-3 ST2A候補材の耐照射損傷性・耐熱衝撃性を評価するためには、RaDIATE国際共同研究と連携協力し、大強度陽子ビーム照射を実施して、照射前後で機械的性質(強度・延性・疲労強度・クリープ特性など)について陽子ビーム照射の影響を評価することが必要である。主にコロナウイルス蔓延の影響により、国際連携研究には大きな影響が生じており、当初予定の米国BLIP施設での大強度陽子ビーム照射は2022年度から2024年度後半と先送りせざるを得ない状況となった。HiRadMat施設における耐熱衝撃試験は2023年度から2022年度と予定より前倒しとなり、本年度に照射に向け試験片の製造を完了し、組立のため米国FNALに送付した。
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Strategy for Future Research Activity |
βチタンTi-15-3合金の微細組織制御方法を確立する。据込鍛造で等軸微細粒組織を実現できなかった原因として、本来であれば800℃~900℃のβ相領域で実施することの望ましい準安定βチタン合金Ti-15-3の鍛造を、Ti-64合金で用いられているα+β相域(750℃)で実施したことが原因であろうと考えられる。これはβ相領域では結晶粒の成長が著しく早く、すぐ粗大化してしまうため、処理速度のかかる据込鍛造ではβ相域での処理が難しいと判断したためであった。本年度は前処理として据込鍛造実施の後、より処理速度の速い熱間圧延を適用することで、β相域下でも短時間で十分な歪みを蓄積し、組織の一様等軸細粒化を実現する。この材料を用いビーム窓プロトタイプを製造し、製造過程・時効処理適用方法の改善を試みる。 HiRadMat施設での耐熱衝撃試験を2022年10月後半に実施予定である。年度前半FNALにて照射アレイ組立を実施し、6月に事前打合せと安全教育受講のため、10月には実験準備と照射実験立合のためにCERNに出張する。 待ち望まれる大強度陽子ビーム照射については、このほどRaDIATEの英国チームにより、Birmingham大学のサイクロトロンを用い、28-30MeV × 30uAの照射を2023年度に実施する計画が策定されつつある。BLIP(181MeV×154uA)に比べエネルギーが低いために、0.1㎜程度の厚さを持ついわゆるメソスケール試験片を用い、曲げ・疲労強度を計測することを目指す。BLIPでの照射について、運転エネルギーを120MeV程度に下げ、かつRHICと同時に運転するなどの手段で、運転費用を削減できる可能性が明らかとなった。9月に英国、年末以降BNLでの会議に参加し、これらの照射計画の立案に中核的に貢献する。 HIT施設における照射実験を継続、逆解析での延性評価方法を進展させる。
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