2021 Fiscal Year Annual Research Report
High-Precision Measurement of Negative Muon Mass by Muonic Helium Atom Hyperfine Structure Spectroscopy
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21H04481
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
Patrick Strasser 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 講師 (20342834)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | 負ミュオン / ミュオニックヘリウム原子 / 超微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ミュオニックヘリウム原子(ヘリウム原子核、負ミュオンおよび電子の束縛状態)の基底状態における超微細構造を精密に測定することで、負ミュオンの磁気モーメントと質量を高精度で決定する。正負ミュオンの質量の比較からCPT不変性を検証し、超微細構造の測定値を量子三体系の精密計算と比較して量子電磁力学を検証する。 J-PARC MLFにおける世界最高強度のパルス負ミュオンビームを利用し、ラビ振動を時間領域で解析する分光法(ラビ振動分光法)と光ポンピングによるミュオニックヘリウム原子の再偏極技術を組み合せることで測定精度を向上させる。ゼロ磁場における超微細構造の直接測定と、高磁場中におけるゼーマン遷移の分光による間接測定を行う。 今年度はJ-PARC MLF MUSEにおいてゼロ磁場環境下でのマイクロ波分光実験を行い、4気圧および10.5 気圧のヘリウム気体標的を用いてミュオニックヘリウム原子の超微細構造を先行実験の結果を上回る統計精度で測定することに成功した。系統的不確かさの評価を含む詳細なデータ解析が進行中である。 これと並行して、ミュオニックヘリウム原子をスピン交換光ポンピング(SEOP)によって再編極するためのアルカリ金属を添加したヘリウムガラスセルとレーザー光学系を開発し、電子スピン共鳴信号を観測してSEOPによる電子スピン偏極を確認した。また、ミュオンスピン分光器を用いたミュオニックヘリウム原子の再編極実験を実施するための光学筐体を製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ミュオニックヘリウム原子の再編極技術を用いて分光測定の統計精度を大幅に改善することを目指している。精密分光の測定対象として知られるミュオニウム(正ミュオンと電子との束縛状態)とミュオニック原子の大きな違いは、ミュオニック原子がカスケード脱励起する過程で起こる衝突的なシュタルク混合による負ミュオンのスピン減偏極である。これにより、基底状態におけるミュオンの残留偏極はミュオニウム(50%)と比較して低い(6%)。そこで、本研究ではレーザー光で電子スピン偏極したアルカリ金属蒸気とのスピン交換衝突でミュオンのスピンを偏極させる(SEOP)。この技術により、分光の統計精度をほぼ10倍向上させることができる。 研究計画の初年度に実験装置を設計した。装置は、微量のアルカリ金属を添加したヘリウムガスを封入するガラスセルおよびヒーター、SEOPに用いる高出力のレーザー光学系で構成される。レーザーダイオードアレイと体積型ホログラフィック回折格子を用いて波長795 nm、連続波出力100 Wのレーザー光を照射する光学系とした。ルビジウムとカリウムを微量添加してヘリウムガスを充填したガラスセルにレーザー光を照射し、電子常磁性共鳴を観測して電子スピンの偏極を確認した。また、ミュオンスピン分光器にレーザー光学系を組み込むために大型の光源筐体を製作した。 SEOP装置の開発と並行して、ゼロ磁場でのミュオニックヘリウム原子分光実験を実施した。ヘリウムガスに微量のメタンガスを電子供給源として混合し、ミュオニックヘリウム原子の中性化効率を向上させた。超微細構造の遷移周波数は標的ガスの圧力に応じてシフトするため、この効果を評価するべく4気圧および10.5気圧での測定を行った。いずれの圧力においても超微細構造遷移の共鳴を観測することに成功した。詳細なデータ解析が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はSEOP装置を完成させ、ミュオニックヘリウム原子の再編極実験を行う。ミュオンスピン分光器でミュオンが崩壊して生じる電子の放出角度異方性を測定することにより、ミュオニックヘリウム原子のスピン偏極率を測定する。ガラスセルに封入するアルカリ金属の成分比および温度を変えた測定を行い、SEOPの諸条件を最適化する。 また、ゼロ磁場におけるミュオニックヘリウム原子のマイクロ波分光実験を継続し、初年度に実施したよりも低い圧力領域におけるデータを取得する。初年度に得た高圧領域のデータ解析を完了させると同時に、低圧領域における結果を合わせて標的圧力のゼロ外挿を行い、超微細構造の遷移周波数を決定する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Proposal for new measurements of muonic helium hyperfine structure at J-PARC2022
Author(s)
Seiso Fukumura, Patrick Strasser, Takashi Ino, Takayuki Oku, Takuya Okudaira, Sohtaro Kanda, Masaaki Kitaguchi, Koichiro Shimomura, Hirohiko M. Shimizu, Hiroyuki A. Torii, and Shoichiro Nishimura
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Journal Title
EPJ Web of Conferences
Volume: 262
Pages: 01012(1-6)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Optically Polarized Alkali Metal Cell for Muonic Helium Measurements2022
Author(s)
Takashi Ino, Seiso Fukumura, Patrick Strasser, Masaki Fujita, Yoichi Ikeda, Sohtaro Kanda, Masaaki Kitaguchi, Shoichiro Nishimura, Takayuki Oku, Takuya Okudaira, Hirohiko M. Shimizu, and Koichiro Shimomura
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Journal Title
JPS Conf. Proc.
Volume: 37
Pages: 021208(1-5)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] J-PARCにおけるミューオニックヘリウム超微細構造精密測定及びミューオニックヘリウム偏極用 SEOP 装置の開発状況2022
Author(s)
S. Fukumura, P. Strasser, T. Ino, S. Kanda, K. Shimomura, S. Nishimura, T. Oku, T. Okudaira, M. Kitaguchi, H. M. Shimizu, H. Tada, H. A. Torii
Organizer
RCNP研究会 「中性子と原子で探る基礎物理」(RCNP workshop "Fundamental Physics Using Neutrons and Atoms") (2022年8月12-13日, RCNP, 大阪大学, オンライン会議)
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[Presentation] Measurement and development of muonic helium hyperfine structure at J-PARC2021
Author(s)
Seiso Fukumura, Patrick Strasser, Takashi Ino, Takayuki Oku, Takuya Okudaira, Sohtaro Kanda, Masaaki Kitaguchi, Koichiro Shimomura, Hirohiko Shimizu, Shoichiro Nishimura
Organizer
International Conference on Exotic Atoms and Related Topics [EXA2021] (13-17 September 2021, Online only meeting)
Int'l Joint Research
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[Presentation] J-PARCにおけるミューオニックヘリウム超微細構造精密測定2021
Author(s)
福村省三, Patrick Strasser, 猪野隆, 奥隆之, 奥平琢也, 神田聡太郎, 北口雅暁, 清水裕彦, 下村浩一郎, 西村昇一郎
Organizer
日本物理学会第76回年次大会(2021年3月12-15日, オンライン会議)
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[Presentation] ミューオニックヘリウム偏極用SEOP装置の開発2021
Author(s)
福村省三, Patrick Strasser, 猪野隆, 奥隆之, 奥平琢也, 神田聡太郎, 北口雅暁, 清水裕彦, 下村浩一郎, 西村昇一郎
Organizer
日本物理学会 2021年秋季大会(2021年9月14-17日, オンライン会議)