2022 Fiscal Year Annual Research Report
Rupture growth to a giant earthquake regulated by dehydrated water in the oceanic crust
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21H04510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
望月 公廣 東京大学, 地震研究所, 教授 (80292861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 裕亮 京都大学, 防災研究所, 助教 (80725052)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 地震の巨大化 / 断層境界 / 海洋地殻 / ヒクランギ沈み込み帯 / 流体の挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒクランギ沈み込み帯中央部では,プレートの沈み込み方向に平行な境界においてプレート間固着強度が大きく変化しており,この境界周辺(固着強度遷移域)の海域下では,沈み込み帯北部の約2年周期よりも2倍以上長い,約5年周期で大規模なスロースリップイベント(SSE)が発生していることがわかっている.この固着強度遷移域周辺で発生するSSEを直接観測することを目的として,ニュージーランドの共同研究機関であるGNS Scienceと共同で海底地震・地殻変動観測網を展開し,2021年5月に発生した大規模SSEを発生域直上で直接観測することに初めて成功した.海底地震計観測データの解析から,本海域においてテクトニック微動の活動を初めて確認するとともに,その時空間分布について,SSE発生の3か月前から1か月前にかけて,その北部からヒクランギ・トラフ軸に沿って固着強度境界まで南下し,最も活発な活動を示した後に一度活動が停止し,さらにSSEに伴って固着強度遷移域周辺のみで活動が見られたことがわかった.陸域地殻変動観測記録に海底圧力計の記録を加えてSSEのすべり分布について解析したところ,SSEのすべりと微動の活動域が大きく重ならずに隣接して分布している可能性が示された. この直接観測の成功を受け,SSEのすべりと微動活動の時空間分布とプレート境界物性との関係を調べるため,2021年10月よりSSEが約2年周期で発生するヒクランギ沈み込み帯北部において,海底地震・地殻変動観測網を展開して観測を続けている.2022年10月には設置した海底地震計の全台回収,さらに良好な観測記録を取得することに成功したが,この期間にはSSEが発生しなかったため,さらに同海域での海底地震・地殻変動観測を継続するための再設置を行った.回収した観測データを用いて,SSEの発生しない期間の定常的な活動に関して解析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,国際共同による海陸統合大規模観測によって断層すべりと流体の挙動を直接捉え,断層境界周辺における断層すべりのメカニズムを明らかにし,地震が巨大化する条件の理解に資することにある.ヒクランギ沈み込み帯の中部では,プレート間固着強度が急変し,断層すべり過程にも明瞭な境界が認められ,これまでの研究から,この境界が海洋地殻内の流体生成量の不均質に起因し,断層すべりも流体の挙動に依存していると考えられる.このプレート間固着強度遷移域では,約5年周期で大規模なスロースリップイベント(SSE)が発生しており,このSSEに伴うテクトニック微動や通常の地震活動を観測し,これらの時空間分布の関係などから,流体の挙動に関する情報を得ることが必要である. 本研究では,ニュージーランドの研究機関と共同でプレート間固着強度遷移域周辺において海陸統合地球物理観測網を展開し,2021年から2022年にかけての発生が予想されるSSEおよびそれに付随する微動や通常の地震活動について,観測網直下での直接観測を目指した.2021年5月には予想していた大規模SSEが観測網直下で発生し,本海域における観測網での直接観測に初めて成功,観測データも無事回収して,重要な成果を上げることができた.この観測データの解析を進めているところであるが,SSEの断層すべりや微動活動の時空間分布が明らかとなりつつある. この観測の成功を受け,SSE発生サイクルに伴う多様な断層すべりの事象を観測し,詳細な断層すべり運動の把握,および流体移動との関係を解明するため,ヒクランギ沈み込み帯北部において,アメリカも含めた大規模な海域地震・地殻変動観を展開しており,より高い精度で断層すべりの時空間分布を推定することを目的としている. 以上より,当初計画していた観測,およびデータ解析よりも,さらに進展していると認められる.
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Strategy for Future Research Activity |
約5年周期で大規模なスロースリップの発生が見られるヒクランギ沈み込み帯中部に位置するプレート間固着強度遷移域において,スロースリップや,それに伴うテクトニック微動,および通常の地震における断層すべりの全体像を把握するため,ニュージーランドの研究機関と共同で海陸統合地震・地殻変動観測網展開した.この観測網による2021年5月に発生したイベントの直接観測の成功を受け,スロースリップにおける断層すべり,テクトニック微動の時空間発展,さらに通常の地震活動の震源分布などに関して,ニュージーランドの研究機関と共同で解析を進めていく. また,スロースリップの発生サイクルにおける断層すべり現象の全体像把握のために,2021年10月からヒクランギ沈み込み帯北部に,ニュージーランドとの国際共同による海底地震・地殻変動観測網を展開しており,2022年10月からはアメリカを加えた大規模な海域地球物理観測網を展開している.2023年9月から10月にかけて,ここで設置した海底観測機器を回収し,解析を始める.さらに同海域における国際共同観測を継続することとし,これまでの解析から明らかになった微動の活動分布を考慮して,その活動様式の把握を進展させるための観測網を策定し,2023年10月から11月にかけて観測網を設置する. 海域下で発生した微動,および繰り返し地震の活動に関する解析手法や,海域下プレート境界における流体の挙動の直接把握を目的とした,海底における環境雑音の自己相関解析によるプレート境界周辺構造の時空間変化の解明に向けた手法の開発を引き続き進める.また,海底圧力計による高サンプリング圧力記録について,地震波到達時刻の検測に用いることを目的として,その時刻精度の検証を進める.過去の地震・テクトニック微動の活動を把握するため,これまでに陸域地震観測網で取得された観測波形記録の整備を進める.
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Research Products
(14 results)
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[Presentation] Insights into the occurrence and characteristics of near-trench slow slip events at the central Hikurangi subduction zone from a recent seafloor geodetic experiment2022
Author(s)
Laura M Wallace, Yoshihiro Ito, Neville Palmer, Syuichi Suzuki, Ryota Hino, Charles A Williams Jr, Kimihiro Mochizuki, Yusuke Yamashita, Emily Warren-Smith, Katie Jacobs, Martha K Savage
Organizer
American Geophysical Union 2022 Fall Meeting
Int'l Joint Research
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