2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of 4D X-ray elastography
Project/Area Number |
21H04530
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢代 航 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 教授 (10401233)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | X線 / 放射光 / イメージング / トモグラフィ / 粘弾性体 / 複素弾性率 / ソフトマテリアル / 時分割 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最近、研究代表者らが世界で初めて原理実証に成功した、不透明な粘弾性体内の複素弾性率の分布を高空間分解能で可視化するX線エラストグラフィの4D(3D+時間)化、高空間分解能化・高時間分解能化を目的としている。最先端のX線位相コントラストトモグラフィとデータサイエンス技術を駆使して、①msオーダー時間分解能X線エラストグラフィ、②100 nmオーダー空間分解能X線エラストグラフィの実現を目指し、これまで数値シミュレーションによるアプローチに限られていた非平衡系のマイクロレオロジーの世界を実験的に研究する方法を確立することを目指している。本研究は、実験レオロジーの新たな時空間領域を開拓するもので、生体や材料破壊などにおけるマイクロレオロジカルな現象の理解を飛躍的に前進させる基盤技術になるとともに、将来的には、ポストコネクトーム時代の脳機能イメージングなど究極の計測技術に発展すると期待している。 2021年度は主に①を実施した。スリップリングとステッピングモーターからなる試料回転加振装置を新たに開発し、大型放射光施設SPring-8の偏向電磁石、および高エネルギー加速器研究機構の放射光施設Photon Factoryの縦型ウィグラーからの白色放射光を利用して、時間分解能サブ秒、空間分解能20μmで、複素弾性率の三次元分布の可視化の原理実証に成功した。試料としては、ブタ肺などの生物由来試料を用い、本研究の手法が有効に機能することを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、最近、研究代表者らが世界で初めて原理実証に成功した、不透明な粘弾性体内の複素弾性率の分布を高空間分解能で可視化するX線エラストグラフィの4D(3D+時間)化、高空間分解能化・高時間分解能化を目的としている。最先端のX線位相コントラストトモグラフィとデータサイエンス技術を駆使して、①msオーダー時間分解能X線エラストグラフィ、②100 nmオーダー空間分解能X線エラストグラフィの実現を目指している。2021年度は主に①を実施した。スリップリングとステッピングモーターからなる試料回転加振装置を新たに開発し、大型放射光施設SPring-8の偏向電磁石、および高エネルギー加速器研究機構の放射光施設Photon Factoryの縦型ウィグラーからの白色放射光を利用して、時間分解能サブ秒、空間分解能20μmで、複素弾性率の三次元分布の可視化の原理実証に成功した。試料としては、ブタ肺などの生物由来試料なども用い、本研究の手法が有効に機能することを実証した。特に、回折格子干渉法を用いた位相コントラストイメージングを応用して、一枚の投影像から、複素弾性率の空間分解能を損なうことなく(画像検出器の空間分解能で決まる空間分解能で)、高感度でX線エラストグラフィCTが実現できることを実証した。また、2022年度以降に計画していた研究も進めることができ、これまでMRエラストグラフィ、USエラストグラフィで上限と言われていた加振周波数1,000 Hzを超える1,200 HzでもX線エラストグラフィCTが実現できることを示した。これらの成果により、ミリ秒X線エラストグラフィCTの可能性も拓けた。一方で、②については予算の都合から準備に止まった。①、②平均で概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、当初の計画よりも早く、ミリ秒時間分解能X線エラストグラフィCTの有効性について検証することを目指す。2021年度に、従来のMRエラストグラフィ、USエラストグラフィでにおいては上限と言われていた1,000 Hzを超える加振周波数で、空間分解能20μm程度のX線エラストグラフィCTが実現できた。さらに回折格子干渉計を平行配置にすることで、理論的な感度の上限で試料内構造の変位を可視化できることを示した(特許出願済み)。ミリ秒時間分解能に向けた最適化の準備がすでに整っているため、当初2023年度に予定していたミリ秒X線エラストグラフィCTの有効性の検証を前倒しする計画とした。 一方で、計画よりも遅れていたX線結像顕微法との組み合わせによる高空間分解能X線エラストグラフィCTについては、光学系の設計は完了しているが、予算の都合で2021年度の原理実証実験の実施は見送った。2022年度予算で、高空間分解能を実現するためのX線結像レンズを購入し、原理実証および最適化を進める計画である。特に加振方法について、磁性粒子の外場による振動など、新しいアイディアを検討しており、2022年度後半の大型放射光施設ビームタイムで実験を実施するための準備を進めている。また、スパースビューCT、低線量CTなど、圧縮センシングに基づくCT再構成アルゴリズムについては、すでに準備が完了しており、2022年度の高空間分解能X線エラストグラフィCTへの適用を目指す。
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