2021 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding Tactile Functions that Contribute to Human Dexterity Based on Reproductions of Cutaneous Sensation with Real-time Simulation
Project/Area Number |
21H04542
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
昆陽 雅司 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20400301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐瀬 一弥 東北学院大学, 工学部, 准教授 (20805220)
永野 光 神戸大学, 工学研究科, 助教 (70758127)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | 触覚ディスプレイ / 皮膚感覚 / マニピュレーション / 実時間シミュレーション / 多指力覚提示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,指と対象物との接触を実時間で高速にシミュレーションし,分布触覚ディスプレイにより皮膚感覚を再現する触覚サイバー・フィジカル・システムを構築して,ヒトの把持・操り戦略を実証論的に調査することを目的とする.本年度は,基盤技術の確立を目指して,1)世界最高水準の分布触覚提示技術,2)柔軟物体・複数接触・摩擦に対応した高速シミュレーション技術,3)皮膚感覚と力覚を独立提示可能な多指操作環境,に関して,以下の研究開発を行った. 1)従来の2倍の解像度をもつ1指32chの吸引刺激デバイスを開発した.これによりも従来よりも高精度に対象物の硬軟を弁別できることを被験者実験により確認した.当初予定して実装方法よりも,吸引圧の応答性と精度に優れる小型真空レギュレータを用いた空圧制御システムを構築することができた. 2)VRにおける柔軟物体の把持の実現に向けて,柔軟物体同士の実時間接触シミュレーション手法を開発した.変形計算に有限要素法を採用することで物理的妥当性のある結果が得られた.マルチコアCPUによる並列化により合計節点数1500程度まで実時間計算(30 Hz)を実現した. 3)皮膚感覚提示装置と統合可能な6自由度力覚提示装置の設計および製作を行った.多指での統合に向けた第一段階として,一指用の装置の開発を実施した.指先への6自由度力覚提示を実現するとともに従来の力覚提示装置より動作範囲を拡大させた機構として,6RSSパラレルリンク機構に対して冗長関節を追加した機構を設計した.また,シミュレータからの指令に基づく力覚提示が可能であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,計画していた基盤技術の確立を目指して,1)世界最高水準の分布触覚提示技術,2)柔軟物体・複数接触・摩擦に対応した高速シミュレーション技術,3)皮膚感覚と力覚を独立提示可能な多指操作環境,の各研究開発項目について,予定していた基礎的な検討が完了し,試作システムにより性能の確認と課題の把握を行うことができたことから,概ね順調に進捗していると判断する. 1)世界最高水準の分布触覚提示技術に関しては,当初予定していたマイロポンプを用いた小型空圧制御方式よりも応答性と精度に優れる小型真空レギュレータを用いた多チャンネル空圧制御システムを実現し,3D造形機された弾性材料により,皮膚への密着性に優れる柔軟・高精細な皮膚刺激デバイスの開発に成功した. 2)計画に基づき指と把持対象物の両方を柔軟物体とした有限要素モデルによる計算を実装した.実時間計算実現のためマルチコアCPUによる並列化を行い,単コア計算の約2倍の高速化を実現した.GPUによる高速化は十分な性能は得られなかったため引き続き検討する.また,理論解(ヘルツの接触応力)と比較し定量的に妥当な結果が得られた.より詳細な評価のため商用ソフトで解析を行うため,標準指モデルによる有限要素モデルの作成を進めている.摩擦モデルの実装は,シミュレーションの高速化を優先したため,来年度から実施する. 3)指先への6自由度力覚提示装置の機構として,従来機構である6RSSパラレルリンク機構を改良し,冗長関節を有するパラレルリンク機構を設計および製作した.また,吸引型の皮膚感覚提示装置との併用が可能な力覚提示部位も併せて設計した.皮膚感覚提示装置と統合可能な力覚提示装置は試作および単体での動作確認は完了している.当初予定していた皮膚感覚提示装置との統合は,各システムの性能向上を優先したため,来年度に統合効果の検証を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
<触覚サイバー・フィジカル・システムの基盤技術確立> 1)多チャンネルの吸引圧を高精度に制御する高解像吸引皮膚感覚ディスプレイ技術を開発する.まず1指に対してシミュレーションで得られるSED分布を再現する吸引圧制御法を確立する.また,力覚ディスプレイと統合し,1指および複数指に対応した提示装置を開発する.さらに,多孔チューブを用いた省配線装置を試作する. 2)当初計画に基づき複数指による柔軟物体の把持シミュレーションの開発を行う.計算結果の妥当性評価のため,商用解析ソフトの計算結果との比較,および,実際のヒトの指を用いた実験との比較を行う.そのために有限要素モデルの作成や実験系の構築を行う.前年度に達成できなかった摩擦モデルの開発とGPUによる高速化についても引き続き取り組む. 3)一指を対象とした皮膚感覚提示装置と力覚提示装置装置の統合を進める.皮膚感覚と力覚の複合的な提示による評価実験の実施が目標であるため,本年度試作した6自由度力覚提示装置とともに,商用の3自由度力覚提示装置も候補として検討しながら統合を進める.また,多指を対象した複合的な提示に向けた力覚提示装置の開発も並行して進める. <知覚的「なじみ」の科学的実証と応用開拓> 昨年度に引き続き,1指を対象として,被験者が知覚的に「なじんでいる」と感じる把持状態に調整させ,対象物の剛性を変化させた際の把持状態の変化を抽出し,知覚的「なじみ」を生み出す皮膚感覚の情報処理について検討する.また,多指の皮膚感覚が統合され把持操りに影響を与えることを検証するための実験システムを構築する.
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