2021 Fiscal Year Annual Research Report
光ファイバ型相関領域反射計による歪・温度の高速分布測定:極限性能の追究と実用化
Project/Area Number |
21H04555
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
水野 洋輔 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30630818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 大輔 立命館大学, 理工学部, 准教授 (70634096)
市毛 弘一 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (10313470)
李 ひよん 芝浦工業大学, 工学部, 助教 (30870787)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 光ファイバセンサ / ブリルアン散乱 / 非線形光学 / 防災技術 / 分布計測 / ライダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、我々が提案した分布型光ファイバセンシング技術「ブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)」の性能向上を中心に、次の各方面から研究を推進した。すなわち、(1) 任意波形変調に基づくBOCDRの基礎理論の確立、(2) 測定ファイバの両端からの光入射によるBOCDRの歪測定精度の向上、(3) 機械学習を通じたBOCDRの空間分解能・動作速度の向上、(4) 相関領域ライダーの提案、などである。以下、それぞれについて詳述する。 (1) 既存のBOCDRの基礎理論は、光周波数を正弦波で変調することを前提としていた。しかし、これは正弦波変調の実装が容易であるために過ぎなかった。そこで、任意波形での変調を適用することでBOCDRの性能を格段に向上させられる可能性があると考え、任意波形変調の基づくBOCDRの基礎理論を構築した。正弦波変調に基づく理論とも整合することを確認した。(2) 光源を直接変調した際に生じる周波数変調と強度変調には位相差があり、これが大きいときは歪分布測定の精度が劣化することが報告されている。そこで、測定ファイバの両端から順次光を入射し、2方向からの分布測定結果を統合することで、精度の劣化を抑制できることをシミュレーションを通じて明らかにした。(3) BOCDRの信号処理に畳み込みニューラルネットワークを導入し、空間分解能を5倍まで向上させるとともに、動作速度を桁違いに向上させることに成功した。(4) これまで光ファイバ系に限定されていたBOCDRの基本原理(光波コヒーレンス関数の合成)を自由空間系に適用することで、対象物の位置やその振動状態をリアルタイムに検出できる「相関領域ライダー」を提案し、基本動作を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、任意波形変調に基づくBOCDRについて一定の進捗(基礎理論の構築に成功)があった。また、当初は想定していなかったが、外部機関との共同研究により、機械学習によるBOCDRの性能向上に関する成果を複数得ることができた。さらに、当初は光ファイバセンサの開発のみを計画していたが、自由空間系に適用することを着想し、実行したところ、「相関領域ライダー」という新規技術を世に打ち出すことができた。これらの成果は、10編の査読付学術論文に掲載され、代表研究者や関係者の多数の受賞につながったほか、国内外の数多くのメディアで報道されるなど、反響は極めて大きいものであった。よって、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、(1) BOCDRの高速化・高精度化、(2) 相関領域ライダーの高分解能化・高精度化・低コスト化、(3) 光相関領域反射計(OCDR)の高速化・高分解能化・高感度化・低コスト化、(4) 偏波OCDRの提案、を計画している。以下、それぞれの詳細を記す。 (1) BOCDRの動作は、各測定位置で取得した散乱スペクトルから歪を算出する速度に律速される。この信号処理を電圧制御発振器およびノッチフィルタを用いて高速化し、歪ダイナミックレンジの制限のない構成で数10 kHz以上のサンプリングレートを実現する。また、別途、機械学習(次元削減およびサポートベクターマシン)による歪算出の高速化にも取り組む。(2) 現時点では、相関領域ライダーの基本動作のみを実証したに過ぎない。そこで、実験系や光パワー、変調振幅や変調周波数などの実験パラメータを最適化することで、空間分解能や精度を向上させる。また、光増幅器や電気スペクトラムアナライザ(ESA)などの大型かつ高価な装置を撤廃し、低コスト化を目指す。(3) OCDRからESAを撤廃し、その内蔵フィルタの影響がなくなり、高速化や高分解能化、および、低コスト化を達成する。また、光パワーを観測する周波数を従来の数MHzから大幅に拡大することでノイズを抑制し、フレネル反射に加えてレイリー散乱も観測できる程度の高感度化を目指す。(4) OCDRの基本原理を用いて、光ファイバに沿った偏波状態の分布を測定する技術「偏波OCDR」を提案し、基本動作を実証する。ブリルアン散乱が偏波状態を保存する性質を利用することも視野に入れる。
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Research Products
(21 results)