2021 Fiscal Year Annual Research Report
進化型MBRによる下水からの有機物回収:下水道の創エネルギーインフラへの転換
Project/Area Number |
21H04569
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 克輝 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10292054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 紳一郎 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (00183898)
羽深 昭 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30735353)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | MBR / 下水処理 / 有機物回収 / 膜ファウリング |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンチスケールのMBR実験システムを構築し、実下水処理場に実験装置を設置して連続ろ過実験を繰り返し実施した。本研究で提案・確立を行うエネルギー回収型MBRでは深刻な膜ファウリングの発生が確実に起こるため、これに対処するための担体を用いた機械的洗浄と薬品併用逆洗(CEB)を実施しながら連続ろ過運転を行った。HRT、SRT、DOを様々に変化させて実験を行い、有機物回収率、膜ファウリング発生度、処理水水質のそれぞれが高いレベルで調和するような運転条件の探索を試みた。HRTを極短の1.5-2時間、SRTも極短の0.5日とすることで、有機物回収率(初沈流入水に対して)は70%を超過する結果が得られた。実下水を用いた実験であったことからDOを一定範囲に制御することが難しく、MBR内のDO濃度は大きく変動した(1-7 mg/L)。処理水中のCOD濃度は20 mg/L程度となり、高い有機物回収率と処理水中の有機物濃度低減を同時に達成可能であることを実証した。膜ファウリングの発生については、CEBに用いる次亜塩素酸の濃度が洗浄効果に大きな影響を及ぼすことを観察した。本年度の研究では50-1000 ppmの範囲でCEBに用いる次亜塩素酸の濃度を変化させたが、最も安定したMBRの運転が可能になったのは次亜塩素酸の濃度を50 ppmに設定した時であった。過度に高い薬品濃度は微生物からの有機物放出を誘引し、MBR内の汚泥ろ過性を低下させるものと考えられた。CEBに用いる次亜塩素酸濃度を50 ppm とし、正味の膜透過水フラックスを20 LMHに設定した実験では5日間程度はほとんど膜ファウリングが発生しない状況を繰り返し観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原理的に可能であることは提唱されていたものの、実際に連続運転をすることは非常に難しいことが容易に予想された極短HRT/極短SRTにおけるMBRの運転が、高強度膜洗浄の導入により可能であることを実下水を用いた実験により実証した。DO条件を高精度で制御することが難しく、さらなる性能の向上につながる実験の実施には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
DO濃度の制御が可能となるような装置の改造に着手する。MBR内における散気装置の交換が必要である。前年度に概念としてのエネルギー回収型MBRは具現化可能であることが実証されたので、より高い実用性を主張するための長期連続運転を試みる。このためには、さらに高効率の膜洗浄を導入する必要がある。次亜塩素酸に加えて他の薬剤をCEBで併用することで、洗浄効果は高くなることが確実である。予備実験により有機酸(シュウ酸もしくはクエン酸)の使用が有望であることが示されており、次亜塩素酸を用いたCEBと適宜組み合わせて有機酸CEBを実施する。実用面では、次亜塩素酸を用いた場合に発生する副生成物の懸念があるため、他の酸化剤についても使用を検討する。
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