2023 Fiscal Year Annual Research Report
進化型MBRによる下水からの有機物回収:下水道の創エネルギーインフラへの転換
Project/Area Number |
21H04569
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 克輝 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10292054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 紳一郎 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (00183898)
羽深 昭 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30735353)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 創エネ / 下水処理 / MBR / 膜ファウリング / 有機物回収 |
Outline of Annual Research Achievements |
下水中有機物の分解を抑制して多くの有機物を回収する一方で処理水中の有機物濃度を十分に低減させられる下水処理技術の開発を目指している。極めて短いHRTとSRTで運転する膜分離活性汚泥法(MBR)、すなわち本研究で提案する進化型MBRではこのような下水処理が可能となるが、膜ファウリングが深刻化することが問題となる。進化型MBR特有となる深刻な膜ファウリングを制御するためには高強度の膜洗浄が必要となる。セラミック平膜を装着したMBRを用いて粒状担体の投入による膜面の高強度物理洗浄と薬液併用逆洗(CEB)を行うことで、進化型MBRを長期にわたり安定して運転出来る可能性を提示しているところである。本年度の研究では、投入担体の適切な選択と薬液洗浄の実施形態改良により膜洗浄効率を大幅に上昇させることができた。これまでに多用してきたポリエチレングリコール製円柱状担体に替えてポリウレタン製立方体スポンジ担体の膜洗浄効果が高いことを確認できた一方で、不可逆的ファウリング解消のためのCEBについては改良の余地が多く残されていた。有機物回収を行う進化型MBRでは反応槽内汚泥の排出が運転再開後の処理立ち上げにおいて妨げにならないことに着目し、通常のMBRでは実施が難しい汚泥排出後のCEBを実施した。このCEBでは透過水側より導入する薬液が原水側到達後に希釈されることなく膜面を滴り落ちるため、薬液の洗浄効果が著しく高くなる。実下水を用いた連続処理実験において、汚泥排出後に実施するCEBが高い洗浄効果を発揮すること、運転再開後の処理性能の低下が問題とならないことを確認した。本CEBにおける洗浄効果は用いる薬品によって大きく異なり、シュウ酸は次亜塩素酸ナトリウムに比べて格段に高い洗浄効果を発揮した。洗浄液の分析より、進化型MBRにおける膜ファウリングの発生には鉄が大きな関与をしていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
セラミック平膜を装着したMBRを用いることで、進化型MBRとして成立させられることを実下水を用いた実験により実証できている。すなわち、流入下水中有機物の70-80%を回収してバイオガス発生に活用することと同時に、処理水中の有機物濃度を十分に低減(除去率90%以上)させられることを示している。本研究では効果的な膜洗浄方法を開発しておりこれを適用することで、従来型MBRと同等程度の膜透過水フラックスで二ヶ月以上の連続運転を安定して行うことができることも実証した。処理装置の大型化・実機化を目指した検討が視野に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
進化型MBRの膜洗浄にあたっては、物理洗浄を担う担体と汚泥排出後CEBに用いる薬品の適切な選択が重要であることが示されているが、必ずしもこれらは最適化されていない。最適化の余地が十分に残っており、これらを探索するとともに、物理洗浄により解消される可逆的膜ファウリングとCEBにより解消される不可逆的膜ファウリングの発生機構の解明を目指す。また、装置の大型化を視野に入れた検討を行う。セラミック平膜MBR実機を直接転用するためには投入担体の小型化が必須であるためこれを検討する。また、研究代表者が保有するパイロットスケールMBRを進化型MBRとして運転出来るように改造し、今後の大型実験実施に直結する実験データを取る。
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