2023 Fiscal Year Annual Research Report
局所・流域スケールの視点に基づく洪水時橋梁被害リスク評価の展開
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21H04577
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
二瓶 泰雄 東京理科大学, 創域理工学部社会基盤工学科, 教授 (60262268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 健治 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80425925)
川尻 峻三 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80621680)
岩崎 理樹 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70727619)
柏田 仁 東京理科大学, 創域理工学部社会基盤工学科, 助教 (10774549)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 橋梁被害 / 気候変動 / 豪雨被害 / 洪水 / 橋脚 / 橋台 / 洗掘 / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続いて,次の4項目を行った. (1)簡易版洪水時橋梁被害リスク評価法の確立:全国河川の洪水時橋梁被害データベースを取りまとめた.洪水リスク評価指標として,洗掘には「幅員+支間長」,侵食/流体力には「幅員+無次元断面積」が,各々有用であることを示唆した. (2)詳細版洪水時橋梁被害リスク評価法の確立:橋梁被災評価を目的とした広域・局所モデルを構築した.広域モデルでは,分布型流出モデル(RRIモデル)と河川流モデルを融合したRRI-RFモデルを構築・検討した.また,局所モデルとしては,橋脚洗掘を対象とした乱流解析を行い.橋脚周辺における馬蹄形渦の新しい渦構造や混相流場特有の馬蹄形渦の変形を明らかにし,移動床や土砂輸送が橋脚周辺の渦構造と相互干渉していることを示した.また,出水時に大規模な地形変化が生じやすい勾配・川幅変化点であるknickpointにおける河床変動特性について数値計算モデルに検討を行った.勾配現象地点では,掃流力の減少に伴い顕著な土砂堆積が発生するが,下流部に砂州が形成される場合,平坦床相当よりも掃流砂輸送量が増加するため,このような土砂堆積が減少することが明らかとなった. (3)複雑環境下の橋脚・橋台周辺の耐侵食性評価:橋脚の不安定化進行への河床材料分布やハイドログラフの影響が大きいことを確認した.また,2023年7月豪雨による山口県粟野川のJR美祢線橋台背面盛土被災の現地調査を行った.ここでは,被災箇所よりも上流の湾曲部からの河川水が溢水した流れによって侵食された可能性があった. (4)河川橋脚の健全性評価・診断法の開発:2023年7月豪雨で被災したJR山陰本線粟野川橋りょう,およびJR美祢線第7厚狭川橋りょうの被災事例や近年発生した他の洗掘被害事例を踏まえた水理模型実験を実施し,洗掘による橋脚基礎の不安定化と橋脚の卓越振動数低下の関係を評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)簡易版洪水時橋梁被害リスク評価法の確立:大小様々な河川流域における橋梁被災状況のデータベースを被災形態別に引き続き取りまとめた.また,このデータベースを用いて,河川側・橋梁構造側からの指標を組み合わせ,橋梁被災形態として洗掘・侵食/流体力に適した指標を提案できた. (2)詳細版洪水時橋梁被害リスク評価法の確立:橋梁被害再現を目的とした広域・局所モデルを開発・整備した.局所モデルでは,超多粒子系の乱流解析が可能なGAL-LESモデルを用いて,橋脚周辺の渦構造と移動床・土砂輸送との相互干渉効果を世界で初めて解明できた. (3)複雑環境下の橋脚・橋台周辺の耐侵食性評価:現地の被災事例を踏まえて橋台侵食や橋脚洗掘の素過程や対策工の効果検証に関して検討した. (4)河川橋脚の健全性評価・診断法の開発:現地河川における被災事例に基づく水理実験を行い,洗掘による橋脚の卓越振動数低下の関係を評価できた. これらの項目は全項目で想定以上に進められており,今年度の研究は「(1)当初の計画以上に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)簡易版洪水時橋梁被害リスク評価法の確立:今後発生する豪雨時の橋梁被災状況の調査・データ収集を継続し,データベースを拡充し,更新されたデータベースに基づいて,有用な洪水リスク指標を検証する. (2)詳細版洪水時橋梁被害リスク評価法の確立:個々で作られている流域モデルと局所モデルを精緻化・高精度化を進め,より汎用性があるモデル構築を行う.特に共役・橋桁周辺の局所モデルの高精度化を図る.勾配変化点において河岸侵食による川幅変化が土砂輸送・河床変動特性へ与える影響を検討し,周辺環境へ与えるハザードについて把握する. (3)複雑環境下の橋脚・橋台周辺の耐侵食性評価:継続して橋台侵食や橋脚洗掘,橋梁に作用する流体力に関する実験を行い,耐侵食性評価を行う.2023年の災害調査結果を考慮して,本年度は構造物境界付近や地盤の土質・締固め特性を考慮した限界動水勾配の算定方法の提案に資する実験を行う.さらに,実際の河床材料の粒度分布を考慮し,混合砂礫を用いた水理模型実験を行い,橋脚の基礎形式の影響を検討するために,基礎の形状や根入れ深さを変化させた検討も行う. (4)河川橋脚の健全性評価・診断法の開発:橋脚の卓越振動数に着目した衝撃振動試験を引き続き検討し,河川橋脚の健全性評価・診断法を開発する. (5)最後に,得られた結果を取りまとめて,報告書を作成する.
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