2022 Fiscal Year Annual Research Report
Monitoring and evaluation of volcanic activity using UAV magnetotelluric survey
Project/Area Number |
21H04602
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Research Institution | Hot Springs Research Institute of Kanagawa Prefecture |
Principal Investigator |
萬年 一剛 神奈川県温泉地学研究所, 研究課, 主任研究員 (70416080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道家 涼介 神奈川県温泉地学研究所, 研究課, 主任研究員 (00604109)
宇津木 充 京都大学, 理学研究科, 助教 (10372559)
藤本 光一郎 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80181395)
南 拓人 神戸大学, 理学研究科, 助教 (90756496)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 水蒸気噴火 / ドローン / 電磁探査 / 箱根火山 / 噴気地帯 / 熱水系 |
Outline of Annual Research Achievements |
箱根火山大涌谷噴気地帯では2008年頃からCSAMT探査による地下の比抵抗分布解析が複数回実施され、火山活動の消長に応じ、比抵抗分布が変化していることが明らかになっている。本研究は、ドローン搭載型電磁探査により、CSAMT探査と同等程度の探査深度と分解能を有する電磁探査を、高頻度かつ人の立入を要さず安全に実施することで、噴火切迫性評価に結びつけることを目標とする。なお、CSAMT探査では発信源に電流を流すことで放射される電磁波の電場と磁場を、測定点において測定する一方、ドローン搭載型電磁探査では、送信電流の通電と遮断を繰り返し、この際に生じる磁場の時間変化に応じて、地下で発生する誘導電流によって生じる、二次磁場(過渡応答)を測定・解析する。 2021年度の探査では、CSAMT探査とおなじ発信源を利用したドローン搭載型電磁探査を実施した。その結果、2015年噴火が起きた谷の中心部では、地すべりモニタリング装置などが原因と思われる電磁ノイズがあり、こうしたノイズが測定データに特定の周期で載ってしまうため(同期ノイズ)、過渡応答曲線を抽出できない問題が生じた。 そこで、本年度(2022年度)は、まず、ノイズの発生源とその性質を予備探査によって明らかにした。次に、この結果を受けて、発信源の通電時間を4 msから 2 ms に半減した信号を用いて同期ノイズの低減を図った。これに加えて、スタッキング数を4倍に増やす、発信源の電極数を増やして電流を増加させるなどのS/N比の改善に努めたほか、解析法に工夫を重ねて、良質な過渡応答の取得を試みた。 この結果、過渡応答曲線の取得には成功したものの、波形が正常なものと異なり逆転や正負に振動するなどの異常を示した。この原因を探るために、地上でも測定を行ったところ、電気施設や埋設管など人工物の導体の存在により、このような異常が生じることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度および今年度、そして既存の探査結果を総合すると、ドローン搭載型電磁探査は理想的な条件下ではCSAMT探査と同等程度の探査結果が得られる可能性が示唆されたが、噴気地帯周辺および中心部では、地すべりモニタリングなどが発するノイズや、送配電設備、および温泉送湯管や水道管などの埋設された導体の人工物がドローン搭載型電磁探査を困難にすることが明らかになった。噴気地帯における水蒸気噴火は一般に小規模で、十分な離隔距離をとれば人的被害は生じない。噴気地帯で噴火の切迫性評価が必要なのは、まさに観光客などが立ち入るためである。そうした場所は、観光客の便宜や安全を図るための人工物も、多かれ少なかれ設置され、探査の障害となる可能性がある。つまり、これまでの探査で、観光地となっている噴気地帯においてはドローン搭載型電磁探査が簡単には適用できない可能性を明らかになったといえる。当初、ドローン搭載型電磁探査は比較的簡単に噴気地帯で実施出来ると考えていたが、これまでの結果は想定外で、実用に向けた課題抽出ができたという点で大きな成果といえる。この進捗状況を否定的に捉えることも可能だが、他の探査方法がまだ残されている。年間300万人が訪れるおそらく世界最大級の観光噴気地帯である大涌谷でも可能なドローン搭載型電磁探査手法が確立すれば、世界中どのような噴気地帯でも電磁的手法による切迫性評価が可能になるともいえ、ここでは、本研究の進展が極めて重要かつ興味深いものとなったと評価したい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまではドローン搭載型電磁探査でもCSAMT探査と同様、発信源では地下に電流を流す方法をとってきた。しかし、この方法では大地に接地した人工の導体が、ある程度の連続性を持って存在する場合、その人工物に信号電流が直接流れてしまうため、誘導磁場が均質に生じず、これがこれまでのドローン搭載型電磁探査の問題の原因となった可能性が指摘できる。そこで今年度は、地表に電線によるループを敷設し、ここに電流を流すことで大地に鉛直磁場を入射する方式の発信源を用いることとする。この方法では、探査領域が若干限定される可能性があるが、信号は強いことが予想され、人工物に信号電流が直接流れてしまう懸念も除去できる。 一方、今年度までの探査で、大涌谷中心部および縁辺部のCSAMT探査による比抵抗構造が明らかとなった。最近の箱根山ではInSARから減圧による沈降や、蒸気井の蒸気温度から地下での減圧による液相枯渇が推定されており、本年度はこうした変化に関係した比抵抗構造の変化がないか、注意深く検討を行う。
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