2021 Fiscal Year Annual Research Report
金属担持触媒の電気分極~高感度化された電子線ホログラフィーと雰囲気制御による解明
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21H04623
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村上 恭和 九州大学, 工学研究院, 教授 (30281992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 潤子 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 教授 (00415952)
玉岡 武泰 九州大学, 超顕微解析研究センター, 助教 (00871229)
北條 元 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90611369)
吉田 秀人 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (00452425)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / ナノ粒子 / 電荷移動 / その場観察 / 分極 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、主として要素技術の開発に関わる研究を実施した。研究項目と成果を以下に記す。 (1)ガス雰囲気下での電子線ホログラム収集技術の構築:研究分担者の吉田と松田の協力のもと、ガス雰囲気下での顕微解析が可能な環境電子顕微鏡に搭載されていた電子線バイプリズムシステムを、本研究課題の遂行のために高度化・最適化した。具体的には、試料を透過した電子波(物体波)の位相計測におけるノイズを、ハードウェア調整を通して低減するために、0.1マイクロメータオーダーのバイプリズムワイヤに調整を施し、同ワイヤに付着する帯電誘発物の除去等を行った。また調整したバイプリズムワイヤのもとで明瞭な電子波干渉パターンを取得するためのレンズ条件調整を行った。 (2)情報科学的手法を駆使した信号抽出法の整備:電子線ホログラフィーにおける位相再生の精度は、画像データである電子線ホログラムの像質に強く依存する。この位相再生精度を高めるために、多数のホログラム・多数の位相再生像の積算平均化をもとに(上述したハードウェア的な取組に加えて)ソフトウェア的なアプローチによってノイズを低減する解析プロセスを整備した。さらに情報科学的な手法を活用する形で、ウェーブレット隠れマルコフモデルを用いたノイズ除去に取り組み、位相解析精度の更なる向上を進めた。 (3)担持触媒系の試料調製:研究分担者の北條と永長の協力のもと、薄片化したTiO2酸化物の試料端に、Ptナノ粒子を効果的に担持させる試料調製プロセスを整備した。この方法で準備された試料は、Ptナノ粒子が真空部分に突き出る形となるため、電子線ホログラフィーの実験で不可欠となる参照波領域の確保がしやすい。さらにPtとTiO2の界面を電子線入射方向に対してエッジオンの条件で観察できるため、次年度以降に実施する精緻な顕微解析に応用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究については、ホログラフィー電子顕微鏡の予期せぬ故障・不具合が発生したために実験の継続が難し期間が発生したが、繰越承認のもと当初計画していた研究の一部を令和4年度に実施し、最終的には予定していた研究内容を完了することができた。特に、担持触媒系の試料調製については、研究分担者である北條と永長の協力のもと、電子線ホログラフィーにおけるデータ集取に対して理想的な形態の試料、即ちTiO2とPtナノ粒子の界面をエッジオンの条件で観測でき、なおかつ参照波の設定に必要な真空領域をPtナノ粒子のごく近傍に確保できる理想的な技術基盤が整備された。この成果は、次年度以降に実施する精緻な顕微解析を加速し得る重要な業績と言える。さらに、この調製技術で得た触媒試料は、電子線ホログラムの自動収集についても好ましい形態であり、実際にこの試料をもとにホログラムの自動集取に関わる技術の進展が達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究実績を踏まえ、次年度は、触媒試料からのデータ収集を進めるため、以下のような研究を実施する。 (1)ガス雰囲気下での電子線ホログラム収集技術の構築:本年度に整備・調整した電子線バイプリズムを用いたホログラムの収集工程を最適化し、ガス雰囲気下でのデータ取得に関わる技術の確立を図る。 (2)情報科学的手法を駆使した信号抽出法の整備:本年度から研究を開始した、ウェーブレット隠れマルコフモデルによるホログラムの雑音除去を、低照射条件、或いは露光時間の短い条件で収集したデータの解析に拡張する。 (3)電気分極の空間分布とナノ粒子構造との相関解析:Pt-TiO2系触媒試料に対して電子線ホログラムの収集と位相解析、および透過電子顕微鏡法による結晶構造解析を実施する。その解析を通して、Ptナノ粒子の電気分極と触媒試料の構造的因子(Ptナノ粒子とTiO2担体の結晶方位関係、Ptナノ粒子の形状や格子歪などの諸因子)との関係を明らかにする。また、実験結果を考察する際に参照するべき第一原理計算(TiO2に担持させたPtナノ粒子の電荷移動量等に関する計算)を実施する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Automatic Electron Hologram Acquisition of Catalyst Nanoparticles Using Particle Detection with Image Processing and Machine Learning2022
Author(s)
F. Ichihashi, A. Koyama, T. Akashi, S. Miyauchi, K. Morooka, H. Hojo, H. Einaga, Y. Takahashi, T. Tanigaki, H. Shinada, Y. Murakami
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Journal Title
Appl. Phys. Lett.
Volume: 120
Pages: 064103(1)-(6)
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Automatic Hologram Acquisition of Pt Catalyst Nanoparticles on TiO2 by Particle Detection Using Image Processing and AI Classification2021
Author(s)
F. Ichihashi, A. Koyama, T. Akashi, Y. Takahashi, S. Miyauchi, K. Morooka, Hajime H., H. Einaga, T. Tanigaki, H. Shinada, Y. Murakami
Organizer
Microscopy & Microanalysis 2021
Int'l Joint Research
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