2022 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンドNV中心の量子状態高度制御による量子センシング顕微鏡計測研究
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21H04653
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水落 憲和 京都大学, 化学研究所, 教授 (00323311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 昌宏 京都大学, 工学研究科, 教授 (00202119)
大木 出 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (80418574)
徳田 規夫 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 教授 (80462860)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | 量子センシング / ダイヤモンド / NV中心 / NVセンタ / NMR / CVDダイヤモンド合成 / n型ダイヤモンド / バイオ計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本提案ではNV中心を用いた量子センシング顕微鏡計測の開発を行う。更にそれらを用い、革新的バイオ計測技術実現へ研究を展開する。研究実施計画に記載した各研究項目の実績は以下の通りである。 令和4年度は、核磁気共鳴(NMR)応用のための新たな量子センシング手法を考案した。NMRへの応用が期待される量子センシング手法として、これまでNMR線幅の先鋭化を実現する量子ヘテロダイン(Qdyne)法が開発され、注目されていた。しかし、Qdyne法での交流磁場計測では、数十kHz程度の周波数で最大感度を有し、周波数が変わると著しく感度が落ちるという欠点があった。令和4年度に我々は、周波数にほぼ依存せず、高感度を維持する新たな量子センシング手法を考案し、実験的に実証した。この手法を用い、水分子の水素を低周波数(数Hz)で計測し、これまでNV量子センサを用いて計測したNMR信号の線幅としては世界最小線幅(1.6 Hz)を実証した。本成果は、Phys. Rev. Appl誌に掲載され、論文は Editors' Suggestion に選ばれた。 ダイヤモンド材料技術開発に関しては、高品質ダイヤモンドの合成を行った。リンドープn型ダイヤモンドは京大でのCVD合成装置により合成した。合成条件を最適化することにより、ダイヤモンド中の不純物を、微量のリンが取り込まれつつ、窒素混入を抑制できたことを二次イオン質量分析法等により確認した。室温における単一NV中心のT2は自作共焦点レーザ顕微鏡により、ハーン・エコー法によって測定した。合成した試料において、従来報告されている室温での世界最長値(T2 = 2.4 ms)に匹敵するT2 (2.23 ms)を有する単一NV中心が生成していることを確認した。更に、NV軸の配向性についても、[111]方向への高い配向性を確認し、高品質ダイヤモンド合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予期していなかったような重大な事案はなく、おおむね順調に進んでいると考えている。研究実施計画に記載した各研究項目の現在までの進捗状況は以下のとおりである。 NV中心を用いた高感度量子センシング顕微鏡装置については、高感度量子センシング顕微鏡装置の開発研究を行った。磁場に加え、温度計測や核磁気共鳴(NMR)計測を行える装置開発、及びイメージング測定装置の立ち上げを行った。細胞内観測への展開については、立ち上げた装置を用い、板状ダイヤモンドを用い、対象試料について、板状ダイヤ内のNV中心により計測を行い、測定条件探索等を行った。 量子状態の高度制御については、ドレスト状態を用いた感度向上実証の目的に関し、温度センサの高感度化の目的に関し、近年取り組んでいたドレスト状態を用いたT2長時間化技術などをもとに温度感度高感度化を行った。光検出磁気共鳴信号のコントラストがこれまで低くなってしまっていた課題を克服し、信号強度の増強を実証し、また温度変化による信号共鳴周波数のシフトを確認した。 ダイヤモンド材料技術開発に関しては、気相圧力などの合成条件を最適化し、リンや窒素の不純物の取り込み制御を行った。微量のリンが取り込まれつつ、窒素混入を抑制できたことを二次イオン質量分析法、電子スピン共鳴装置、自作共焦点レーザ顕微鏡システムや、分光器を用いて確認した。また、ホール測定による電気伝導度の評価より、n型ダイヤモンドの電気的特性評価を行った。既報のn型ダイヤモンドの最高移動度値に近づく高い移動度が得られ、合成したn型ダイヤモンドが、高品質であることを確認した。 以上のように、研究実施計画に記載した通り、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予期していなかったような重大な事案はなく、おおむね順調に進んでおり、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。 今後も研究計画に記載した各研究項目について、研究を進めていく。
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Research Products
(18 results)