2021 Fiscal Year Annual Research Report
Visible, long wavelength LEDs based on In-rich InGaN on ScAlMgO4 substrates
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21H04661
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船戸 充 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70240827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 良太 京都大学, 工学研究科, 助教 (60737047)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 結晶成長 / InリッチInGaN / ScAlMgO4 / 可視長波長LED / 高効率化 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化物半導体をベースとした可視全域での高効率LEDの開発は,次世代マイクロLEDディスプレイのために不可欠な課題と位置付けられれている.本研究は,(0001)面でIn(0.17)Ga(0.83)Nと格子整合するScAlMgO4に着目し,この基板上に緑色から赤色域にて高効率発光するInGaN系LEDを開発することを目的としている. 従来,厚み数100 nmの In(0,17)Ga(0.83)N単層膜をScAlMgO4基板上に形成し,量子井戸発光層の下地層としている.この下地層の上にIn(x)Ga(1-x)N/In(0.17)Ga(0.83)N量子井戸構造 (x>0.17),p-GaNを順次作製しLED構造としたところ,波長700 nmで発光を電流注入で得ることに成功した.ただし,発光出力は,定格20 mA駆動時に数十nWと低く,これを改善するために,クリアすべき課題が多数存在する状況だと考えている.その一つとして,本年度は,下地In(0,17)Ga(0.83)N単層膜の表面平坦性に着目した.表面は平均二乗粗さで約8 nmの凸凹を持っており,標準的な量子井戸発光層の厚み3 nmを超えていた.それを改善するために,単層膜ではなくInGaN/GaN超格子構造を下地層とすることを検討したところ,表面粗さは5 nm程度まで改善できた.引き続き,超格子の作製条件の検討を行い,平坦化の機構を探る必要がある. 基板そのものの特性も検討を進めた.GaNをScAlMgO4基板に結晶成長し,その結晶性(貫通転位密度)や反りを定量した.少なくともサファイア基板と同等の結晶は形成できるが,予想以上に反りが大きかった.基板の物性が関与していると考えられ,原因の究明が必要であると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ScAlMgO4基板上への窒化物半導体の有機金属気相成長に関して,様々な知見とその対策が蓄積されつつある.例えば,p-GaNと利用したLED構造で電流注入により発光が得られることや,InGaN単層膜に代えてInGaN/GaN超格子にすることにより量子井戸の下地の表面平坦性が改善することがわかってきた.後者に関しては,超格子構造の設計や作製条件の検討が不十分であり,次年度以降も検討を継続する必要があると考えている.またそのような検討を通じて,最終的にはLEDの発光効率の改善につながる知見が得らえると期待される. 基板材料であるScAlMgO4自体も開発対象であり,基板メーカと共同で基板の表面処理条件とエピタキシャル層の特性の関連なども調べつつある.表面加工技術の進展に伴い,As-receivedの基板であっても原子レベルで平坦な表面が得られるようになり,それがそのまま薄膜の結晶成長に使用できる,いわゆるエピレディな状態であることも明らかとなった.そのような基板上のGaNエピタキシャル層は従来のサファイア基板上と同等の特性を示しており,本基板の開発は順調に進捗していると考えている. 本研究で得られた成果により,ワイドギャップ半導体学会第4回研究会(2021年12月)やLaser Display & Lighting Conference 2022 (2022年4月)で招待講演を行ったほか,応用物理学会結晶工学分科会第157回研究会での招待講演が決まっており,対外的にも広く認知されつつある. 以上のように,目標とする可視長波長発光デバイスの高効率発光に向けて,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
InGaN/GaN超格子層に関しては,これまで,臨界膜厚を考慮した構造設計と素子の作製を行ってきたが,まだ,十分な実験量をこなせているわけでない.引き続き様々な設計および成長条件で作製した超格子層の評価を通じて,ScAlMgO4基板上での窒化物半導体の結晶成長を支配する要因を抽出し,その要因を開明していくことが,学術的にも実用的にも重要であると考えられる.より具体的には,もともと,超格子にする理由は,GaN層による平坦性の回復とInGaN層による格子整合性の維持であった.これらを個別に評価することが重要である. 下地層の平坦性が回復しつつあるので,その上にIn(x)Ga(1-x)N/In(0.17)Ga(0.83)N量子井戸構造 (x>0.17)を作製し,その特性と下地層の特性との関連を明らかにしていく必要がある.内部電界,臨界膜厚などを光学的および構造的な手法により評価し,物性の解明とより高効率で発光する構造を設計・試作する. 基板開発としては,基板メーカでの開発が継続中であり,共同的に基板の特性とそれがエピタキシャル層に与える影響を検討していく.これにより,基板に求められる特性が明らかとなり,InGaNベースの発光素子構造の特性向上に寄与できると考えている.
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