2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H04681
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大宮 寛久 京都大学, 化学研究所, 教授 (40508876)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 有機触媒 / ラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下に述べるような研究成果が得られた。 1)青色LED照射下、触媒量のフェノチアジンとリチウム塩を用いることで、有機ケイ素化合物(アリルシラン、プロパルギルシランなど)と第二級および第三級脂肪族カルボン酸誘導体の脱炭酸型炭素-炭素結合形成反応を開発した。本反応は、アリルシラン、スチレン、脂肪族カルボン酸誘導体を利用したラジカルリレー型三成分カップリングにも適用でき、複雑な炭素骨格を構築することができた。 また、青色LED照射下、触媒量のフェノチアジンとリチウム塩を用いることで、第二級および第三級脂肪族カルボン酸誘導体とトリエチルアミン三フッ化水素酸塩の脱炭酸炭素ーフッ素結合形成反応が進行することを見出した。本反応により、官能基をもったフッ素化合物を合成することができた。さらに、脂肪族カルボン酸とカルボニル化合物から合成したbeta-ヒドロキシカルボン酸誘導体を触媒量のフェノチアジン触媒とリチウム塩を用いて青色LED照射下で反応させたところ、セミピナコール転位生成物が得られた。本反応により、alpha位に嵩高い置換基を有するアルデヒドや大員環ケトン、スピロケトン、alpha-アミノケトンを良好な収率で合成できた。 上記3つの反応では、可視光励起したフェノチアジン触媒から脂肪族カルボン酸誘導体への一電子移動により、温和かつ強酸を用いない条件下において、カルボカチオン等価体となるアルキルスルホニウム種が触媒的に発生する(ラジカルー極性交差機構)。続いて、アルキルスルホニウム種が、求核剤と反応することで、各種生成物を与える。 2)有機光酸化還元触媒とシリルボロン酸エステルを用いた、効率的なシリルラジカル形成法を見出した。このシリルラジカル形成法とN-ヘテロ環状カルベン触媒反応を組み合わせることで、アルケンの光駆動型アシルシリル化反応を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フェノチアジン触媒から脂肪族カルボン酸誘導体への一電子移動を起点とした、カルボカチオン等価体であるアルキルスルホニウム種の触媒的に生成に基づくことで、新しい結合形成反応を幾つか開発し、複数の学術論文に報告した。 また、可視光とN-ヘテロ環状カルベン触媒を用いたアルケンのラジカル介在型アシルシリル化反応を開発し、学術誌に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究者独自のラジカル型有機触媒の反応原理を格段に発展させる。反応条件を実験的に数多く検討することで、含窒素複素環カルベン触媒あるいは有機光触媒によるラジカル反応の基質一般性を昨年度に引き続き拡大していく。昨年度見出した、アリールラジカル駆動型1,5-HAT を活用した、アルキルアミンbeta位選択的C(sp3)-H 結合アシル化反応や含窒素複素環カルベン/有機光酸化還元協働触媒とアシルイミダゾールを用いた、電子豊富アレーンのメタ位選択的アシル化反応 の論文化を目指す。有機光触媒では、昨年度に引き続き、ラジカル介在型炭素ー炭素結合形成反応を中心とした適用範囲拡大を目指すとともに開発するとともに、糖やペプチドのような生体関連分子の第3級アルキル化を検討する。
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Research Products
(38 results)