2021 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属触媒によるカルボニル化合物の結合活性化と非置換型反応開発
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21H04682
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鳶巣 守 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60403143)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 遷移金属触媒 / 不活性結合活性化 / 有機合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、有機合成化学の中核を占める「カルボニル基の化学」に新機軸をもたらす触媒反応群を開発することである。すなわち、ケトン、エステル、アミドといった多様なカルボニル化合物のカルボニル炭素と置換基との間の結合を遷移金属錯体により活性化する申請者独自の触媒を開発し、基幹原料から複雑分子を高い原子効率で合成するための新戦略として昇華させることを目指した。これに関して、本年度は下記の結果を得た。 1)ケトンの活性化:トロポン骨格の脱カルボニル化および5員環への骨格異性化が、ニッケル触媒により進行することを見出した。特に後者の反応はC-C結合の切断をともなったトロポンのシクロペンタジエニルケテンへの異性化を含むことを中間体錯体の単離により明らかにした。この反応は、van der Waalsひずみに基づく環の折れ曲がりが駆動力となっていることも明らかにした。 2)アミドの活性化:アミドC-N結合の活性化を起点とし、カルボニル基の転位をともなった、C-C結合へのノルボルネンへの挿入反応を開発した。環ひずみや配向基に依存しないC-C結合へのアルケン挿入を達成した例である。 3)アシルシランの活性化:パラジウム触媒によりアシルシランの炭素-ケイ素結合が活性化できることを見出した。アルケンを反応剤とした場合、ケイ素の転位をともなった、シクロプロパン化が進行することがわかった。これは、フィッシャー型カルベンの触媒的な調整法として有用である。さらに、反応剤として、アレンを用いた場合、アシル基とシリル基が付加したシリルアシル化反応が進行することも明らかにした。この際、ケイ素は内部炭素と結合し、完全に位置選択的に付加が進行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初想定したカルボニル化合物の活性化は、反応の端緒こそ見つかっていたものの、効率が悪く、触媒の最適化や基質展開には2~3年の時間を要すると見込んでいたが、昨年度、論文発表するにまで至った。これらに続く、新しい活性化パターンやそれを利用する反応もいくつか見つかっており、計画以上に展開が広がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
いずれのカルボニル化合物についても、基礎となる活性化触媒を開発し、コンセプト検証的な基本的な触媒反応へと利用可能であることは明らかにできた。今後は、それらをさらにブラッシュアップし、有機合成としてより価値のある変換反応へと応用していく。
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