2021 Fiscal Year Annual Research Report
Organic nanocrystalline heterostructures for high energy density electrode materials
Project/Area Number |
21H04696
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本間 格 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90181560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高石 慎也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10396418)
井口 弘章 東北大学, 理学研究科, 助教 (30709100) [Withdrawn]
永村 直佳 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主任研究員 (40708799)
小林 弘明 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (90804427)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 蓄電池 / 有機二次電池 / 有機レドックス分子 / レアメタルフリー電池 / 有機電極活物質 / リチウムイオン電池 / ナトリウムイオン電池 / 有機ナノ結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
現行のリチウムイオン二次電池正極材料にはコバルト等のレアメタルが使用されていることから資源的制約に課題がありサプライチェーンリスクを抱える。本研究ではこの課題を解決するため、金属資源を一切使用しないレアメタルフリーな有機電極材料の開発を目的とする。有機分子材料は資源的制約がなく、軽元素から構成され多彩な分子設計を可能とし、理論上は有機分子官能基の多電子レドックス反応の利用により現在のリチウムイオン電池無機系電極材料を凌駕する高い蓄電エネルギー密度が可能である。 令和3年度は上記目的を達成するため、カルボニル系有機正極材料としてクロコン酸分子に着目し、計算科学的、電気化学的アプローチにより有機リチウムイオン二次電池の動作実証を行った。その結果、DFT計算によりクロコン酸分子中のカルボニル基が4V以上の動作電位で2電子レドックス活性を示すことが示唆された。このレドックス反応の利用が可能であれば、現行リチウムイオン二次電池を超える高エネルギー密度蓄電システムの開発が可能となる。実際にクロコン酸を正極材料として電気化学評価を行ったところ、約4Vの高電位で繰り返し充放電動作することが確認された。 Fe3+とdhbq配位子からなる新規MOFであるFe2(dhbq)3の開発に成功し、本錯体が多孔性と高い電気伝導性を有することを見出すとともに、本錯体がリチウムイオン電池の正極として、300mAh/gという極めて大きい放電容量を有することを明らかにした。また、6電子レドックス特性が期待される分子としてトリプチセンヘキサチオールの合成に成功した。 放射光顕微XPSによる有機電極活物質評価のテストとして、エッジを選択的に光酸化したグラフェンにおけるエッジ近傍での電荷移動の定量的評価に成功した。局所的な輸送特性を計測しながらラマン分光観測ができる多探針オペランド顕微ラマン分光装置の開発も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レアメタルフリー有機正極材料としてクロコン酸を選択し、計算科学的・電気化学的アプローチにより高電位レドックス活性評価を行った。γブチルラクトン溶媒中にクロコン酸が溶解しているモデルを構築しDFT計算を実施した。その結果、4.39V、及び4.06Vの二段階の動作電圧においてクロコン酸分子中のカルボニル基がレドックス活性を示すことが確認され、クロコン酸分子は理論的に1349Wh/kgの高エネルギー密度蓄電システムを可能とする有機材料であることが示唆された。続いて、電気化学的にクロコン酸分子のレドックス活性を評価するため、1M LiPF6 γブチルラクトン電解液中に2 mMとなるようクロコン酸を溶解させ、掃引速度100 mV/s、3.0-5.2 V vs Li/Li+の条件でサイクリックボルタンメトリーを評価した。その結果、計算科学的に示唆されたレドックス電位と同等の反応電位で可逆的なレドックスピークが確認された。正極としてクロコン酸系カソライト、電解質として酸化物系固体電解質、負極としてリチウム金属を使用したコインセル型有機二次電池を構築し、20 mA/gの電流密度にて定電流充放電試験を実施した。約4Vに放電プラトーが観測されたことから、DFT計算、及びサイクリックボルタンメトリーの結果を支持する充放電特性が得られた。 正極の高容量化を実現するため、6電子レドックスが期待される分子として、トリプチセンヘキサチオールの合成に成功した。また、本分子をNi2+およびCu2+イオンと反応することで、配位高分子の合成に成功した。 放射光顕微XPS装置は、エネルギー・空間分解能の向上を求めてSPring-8から東北放射光新光源NanoTerasuへ移設作業を行っている。令和5年度中の稼働を目標に立ち上げ作業を進めている。有機電極物質の分光評価のためのモデル試料の構造を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、これまで報告例の少なかった4V級高電圧動作可能な有機リチウムイオン二次電池の動作実証に成功したことは大きな成果である。一方、高電位動作において有機活物質の電解質溶出が課題の一つであることが明らかになった。今後の研究方針として、有機正極材料の担持材料としてカーボン材料の最適化、及び有機活物質の溶解抑制を可能とする有機分子/カーボン材料の界面設計を検討し、本研究におけるレアメタルフリー有機二次電池の実用性を明らかにする。また有機分子正極のナトリウムイオン二次電池への応用を検討し、構成材料全てレアメタルフリーで安価な次世代蓄電池の開発を行う。 錯体系材料開発においては合成に成功したトリプチセンヘキサチオール分子をリチウム硫黄電池の正極として用い、電極容量を評価するとともに、同分子からなるMOFを合成しリチウムイオン電池の正極材料としての可能性を探る。 令和5年度中に顕微XAFS(STXM)でアントラキノンと炭素電極の結合状態および電荷移動の評価分析を行い、そこで得た知見を元に、ドナー有機分子結晶とアクセプター有機分子結晶間の電荷移動評価の方針を固める。顕微ラマンでの界面分析(面内および深さ方向)も実施する。
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