2021 Fiscal Year Annual Research Report
Electric double layer in nanospace: Integration of statistic analyses of experimental and simulation data
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21H04697
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大久保 將史 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20453673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 康伸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00715039)
獨古 薫 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (70438117)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 電気化学キャパシタ / 層状化合物 / インターカレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、電気二重層キャパシタの高エネルギー密度化を目指し、静電容量を増大させる新しい指針として「インターカレーション静電容量」を提案するものである。具体的にはMXene(マキシン)と総称される層状化合物を研究対象とする。MXeneは、層間ナノ空間に挿入されたイオンが電気二重層を形成し、インターカレーション静電容量を与える。これまでの応募者の研究で、層間ナノ空間に共挿入された電解液の溶媒分子が外部電場を過剰遮蔽し、静電容量を大幅に増大することが明らかとなっていた。 2021年度においては、MXeneの電子状態・構造状態、表面官能基、電解液溶媒分子の性質、イオン種、濃度、などのインターカレーション静電容量を支配すると考えられる因子の膨大な数に及ぶ組み合わせに対して、まず、MXeneの表面官能基を制御して化学的状態を制御する手法の開発を行った。通常のフッ酸を用いる手法ではなく、溶融塩を用いる手法によりMXene合成を行い、表面官能基を完全に制御することに成功した。その表面官能基の種類は、-F, -Cl, -Br, -I, -O, -OHなど多岐に渡っており、表面官能基が電極特性に与える影響を実験的に評価する基盤技術を確立することに成功した。 また、並行して表面官能基を制御したMXeneが示す電気化学特性を予測するために、理論計算を行った。水系電解液で与える静電容量を比較したところ、表面官能基の電気陰性度が低いほど電気二重層の厚さが薄くなり、単位面積当たりの静電容量が大きくなることが分かった(T. Shimada, et al., Chem. Mater. 2022, 34, 2069)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
溶融塩法を用いることでMXeneの表面官能基を完全に制御することに成功し、電気化学特性に関する膨大なデータを取得する基盤技術を確立した。また、官能基が電気化学特性に影響を与えることを理論計算で予測することに成功した。以上のことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度においては、2021年度に合成に成功した表面官能基を制御したMXeneについて、電気化学特性を実験的に検証し、データ科学的統計解析を適用する実験データを取得する。特に、MXeneは電解液が電極特性に大きな影響を与えることが報告されており、電解液そのものの特性についてもデータ蓄積が必要となる。共同研究者(横浜国立大学・獨古)との協業により、電解液のイオン伝導度、輸率、電位窓に関するデータ蓄積を積極的に進め、統計解析を適用するための準備を進める。また、並行して様々なMXene、電解液との組み合わせに対して理論計算を実施し、電気二重層の構造、静電容量などの熱力学的解析、イオン輸送、電子伝導などの速度論的解析を行うことで、統計解析に供する計算データを蓄積する。以上のデータ蓄積は、様々なデータ科学に適用可能なデータ形式であることが求められ、共同研究者(産業技術総合研究所・安藤)との協業により、最も効率の良いデータ形式を統計解析を実施する前段階から準備を進める。 もちろん、信頼性の高い統計解析を行うためにはバイアスの無いビックデータが必要であるが、実際の実験データをそのような水準に高めることは著しく困難である。そこで、可能な限りバイアスを排除した小規模な実験データ、計算データから順次統計解析を進め、次の開発ターゲットを絞り込む効率的な運用を模索する。
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