2021 Fiscal Year Annual Research Report
Theory of highly concentrated aqueous electrolyte and application to dual ion battery
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21H04700
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石原 達己 九州大学, 工学研究院, 教授 (80184555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ステイコフ アレキサンダー 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (80613231)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | デュアルイオン電池 / 水電解液 / 高濃度 / イオン性液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
デュアルイオン電池(DIB)は炭素へのアニオンとカチオンの挿入を利用した2次電池である。この電池は高濃度水系電解液を用いると、Liイオン電池並みの高エネルギー密度に到達できる可能性がある。本研究では、多成分系高濃度水系電解液では、電位窓が大きく広がるが、溶媒和構造を含めて、その機構は十分、解明されていないので、電位窓を広く取れる高濃度電解液の探索とその溶媒和構造を含めて、安定性が向上する機構を検討した。初年度は、水系電解液への添加物効果を検討し、アセトニトリルまたはテトラグライム(G4)を添加すると耐還元性が大きく向上し、1.7-5.2Vという広い電位窓を到達することができた。このような電位窓が広がる機構をさらに検討したところ、ラマン分析からはG4を添加するとすべての水がLiFSI-LiTFSIという支持塩に溶媒和することが分かった。そこで、高濃度電解液では溶媒和していない水分子が無くなることで還元分解を生じにくくなることが分かった。一方、G4を添加すると水が配位したLiのNMRピークが低磁場側にシフトし、Fのピークシフトも観測されたので、G4はLiと水およびアニオンの溶媒和クラスターと相互作用していることが示された。そこで、G4を20mol%添加したハイブリッド水系電解液では、デュアルイオン電池のための電解液として興味ある性質があることが分かった。 実際にG4を添加した37mol/kgのLiFSI-LiTFSIを電解液とするデュアル炭素電池を試作し、充放電特性を評価したところ、初期には70mAh/g程度の容量を示すが、初期特性の劣化後に40mAh/g程度の容量を300サイクルにわたり安定に維持できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、目的としていた高濃度電解液による電位までの拡張を目的に種々の添加物効果を検討し、テトラグライムが良好な正の添加効果を示すことを見出した。またNMRやラマン分析を中心に溶媒和構造を検討し、ほぼ目的とした溶媒和構造に関する情報を得ることができた。実際にデュアルイオン電池を作成し、40mAh/g程度の比較的、安定な繰り返し特性を得ることができているので、当初の計画していた成果は得られており、ほぼ目的通りに進捗していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、濃厚電解液中の溶媒和構造を検討するとともに、ハイブリッド系水電解液について、添加物が電位窓に与える影響を明確にする。とくにDIBの動作を視野に入れて、酸化電位を維持しながら、還元電位を低下できる添加物を探索し、その電位窓が拡大できる機構を溶媒和クラスターの構造から明確にする。今後は有機―水系のハイブリッド電解液の溶媒和構造と誘電率やLiイオン伝導性などの基礎物性を明確にする。 DIBの展開では、ハイブリッド系電解液を用いて、負極材料の検討を行う。とくにTiS2などの硫黄系負極の性能を検討する予定である。また、近年、MoS2などの層状無機材料が、アニオンのインターカレーションを生じることが報告されていることから、新たに層状導電性無機化合物のインターカレーション特性の検討を行う予定である。一方、炭素にも、多くの種類があることから、従来のハードカーボンであるKS6の代わりに、ソフトカーボンを中心に、濃厚電解液中での充電、放電の容量測定を行い、最も良好な特性を示す正極ホスト材料を探索する。インターカレートしたアニオンの状態分析としては、引き続きex-situ NMRおよび計算科学を用いて、インターカレーション状態を解析するとともに、電荷分布の分析をDMOL3を用いて行う予定である。酸化還元する元素と共挿入時のクラスターの構造などを解明し、共挿入により、繰り返し特性が大きく向上する機構と大きな複合イオンでありながら拡散速度が大きくは変化しない理由を明確にする。
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