2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21H04715
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
梅田 正明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80221810)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | DNA倍加 / クロマチン / ヒストン |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA倍加は一つ一つの細胞の中でDNA量が倍々に増えていく現象である。それに伴い細胞・器官サイズが大きくなるため、地球上の植物バイオマス生産に大きく貢献している。しかし、植物の中にはDNA倍加を全く起こさない種も存在し、何がDNA倍加能を決める要因となっているかは未だ不明である。そこで、本研究ではDNA倍加の誘導メカニズムをクロマチン構造の視点から明らかにし、DNA倍加を起こさない植物種でDNA倍加を誘発するための基礎的知見を得ることを目標としている。
DNA倍加植物であるシロイヌナズナにおいては、ヒストンメチル化酵素ATXR6がヒストンH3.1のK27をモノメチル化し、セントロメア周辺のクロマチン凝縮を促進することが知られている。ATXR6はH3.1に対する基質特異性をもつことでセントロメア特異的なヘテロクロマチン形成を促すと考えられているが、我々は非DNA倍加植物の多くがATXR6の活性部位にアミノ酸置換をもつことを見出している。このことは、ATXR6のヒストンに対する基質特異性がDNA倍加能を規定する要因となっている可能性を示唆している。そこで、この可能性を検証するため、非DNA倍加植物で保存性が低いアミノ酸残基に変異を導入したATXR6を作成し、in vitroヒストンメチル化アッセイにより基質特異性の解析を行った。その結果、4箇所にアミノ酸変異をもつATXR6はH3.1に対する基質特異性を失い、H3.3のメチル化も行うことが明らかになった。このことから、ATXR6の基質特異性が低下することでH3.3もメチル化できるようになり、DNA倍加誘導に必要なクロマチン緩和が起きにくくなることでDNA倍加能を失うのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CDKによるFAS1のリン酸化部位の同定については、組換えタンパク質の発現に難があり実験が滞っていたが、ATXR6の基質特異性については重要な知見を得ることができた。今後、細胞周期におけるATXR6の蓄積様式について解析する予定であるが、そのための植物材料などの準備も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞周期におけるATXR6の蓄積様式について解析し、DNA倍加との関連性を明らかにする。また、ATXR6のタンパク質蓄積を制御する候補因子として、E3ユビキチンリガーゼに着目して解析を進めていく。これらの研究を通じて、DNA倍加の誘導メカニズムについて細胞周期とクロマチン構造の視点から統合的な理解を目指す。
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