2023 Fiscal Year Annual Research Report
非病原力遺伝子喪失過程で辿るいもち病菌菌群分化とムギ類抵抗性遺伝子の起源・消長
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21H04726
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土佐 幸雄 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20172158)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | Pyricularia oryzae / Magnaporthe oryzae / wheat |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、いもち病菌菌群分化に関わる非病原力(AVR)遺伝子ならびにそれに対応する抵抗性遺伝子を網羅的にクローニングし、それらの寄生性分化・進化過程がAVR遺伝子の喪失過程として説明できるか否かを検証することである。昨年度までに、シコクビエ菌のコムギに対する非病原性には、5つの遺伝子(PWT7, A2, PWT3, PWT8, PWT6)が関与することを明らかにした。本年度は、これを基盤に研究を展開し、次のような成果を得た。 (1)PWT3, PWT8, PWT6 に対応する抵抗性遺伝子は同一のものであることが判明した。これをRwt3.6.8 と命名した。この遺伝子は、パンコムギの起源地より東方地域に高頻度で分布していた。東方にはシコクビエが栽培されており、したがってシコクビエ菌が存在する。しかし、シコクビエ菌がRwt3.6.8をもつ品種を侵すためには、PWT3, PWT8, PWT6 のすべてに突然変異を起こす必要があり、その確率は極めて低い。したがって、Rwt3.6.8は、シコクビエ菌に対する持続的な抵抗性をコムギに付与していると考えられる。このことから、Rwt3.6.8の獲得が、Triticum属の東方への進出を可能にした大きな要因であると推論した。 (2)A2 の座乗領域をfine mappingにより絞り込んだ。 (3)PWT7に対応するコムギの抵抗性遺伝子Rwt7は、オオムギのいもち病抵抗性遺伝子Rmo2 のホモログであることが判明した。 (4)コムギのコムギいもち病抵抗性遺伝子Rmg8のクローニングに成功した。本遺伝子はコムギうどんこ病抵抗性遺伝子Pm4の同祖遺伝子であった。この遺伝子は非病原力遺伝子AVR-Rmg8を認識するが、この認識能力は、Triticum 属とAegilops属の分化以前、すなわち500万年前以前に獲得されたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シコクビエ菌とコムギの相互作用に関わる非病原力遺伝子-抵抗性遺伝子対を次々に同定・クローニングすることに成功している。すでに4ペアの実体を明らかにすることができた。さらに、コムギのコムギいもち病抵抗性遺伝子Rmg8のクローニングにも成功し、その進化過程に関するモデルを提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)PWT8のクローニング、ならびRwt3.6.8のクローニングの成果を論文にまとめ、学術雑誌に投稿する。 (2)A2をクローニングするとともに、これに対する抵抗性遺伝子を、二粒系コムギを用いて同定する。 (3)コムギのRwt7は、オオムギのRmo2 のホモログであるが、異なる非病原力遺伝子を認識する。このメカニズムをドメインスワッピングにより解明し、論文化する。
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[Journal Article] Evolution of wheat blast resistance gene Rmg8 accompanied by differentiation of variants recognizing the powdery mildew fungus2024
Author(s)
Asuke, S., Morita, K., Shimizu, M., Abe, F., Terauchi, R., Nago, C., Takahashi, Y., Shibata, M., Yoshioka, M., Iwakwa, M., Kishi-Kaboshi, M., Su, Z., Nasuda, S., Handa, H., Fujita, M., Tougou, M., Hatta, K., Mori, N., Matsuoka, Y., Kato, K., and Tosa, Y.
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Journal Title
Nature Plants
Volume: -
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] Loss of PWT7, located on a supernumerary chromosome, is associated with parasitic specialization of Pyricularia oryzae on wheat2023
Author(s)
Asuke, S., Horie, A., Komatsu, K., Mori, R., Vy, T.T.P., Inoue, Y., Jiang, Y., Tatematsu, Y., Shimizu, M., Tosa, Y.
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Journal Title
Molecular Plant-Microbe Interactions
Volume: 36
Pages: 716~725
DOI
Peer Reviewed
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