2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H04733
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 継之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (90533993)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 加代子 京都大学, 農学研究科, 助教 (00806416)
|
Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
Keywords | セルロースナノファイバー / 結晶性 / 欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度までの研究で、セルロースナノファイバー(CNF)の断面寸法は、平均すると18本鎖モデル(CNF1本を分子鎖18本が構成するモデル)が妥当である一方、長軸方向の30%~40%の領域で、18本鎖モデルでは説明できない凹み欠陥を有することが判明した。2023年度は、この凹み欠陥の分布解析に注力した。その結果、凹み欠陥の約70%以上が、CNFの屈曲部や端点に局在化していることが判明した。また、屈曲部や端点の凹みは、その他直線部の凹みよりも、深い形状をしていた。さらに、CNFの長さが短くなるにつれ、屈曲部の割合が減少する傾向が見出された。一連の結果をもとに、CNFの生産工程における破断機構を考察した。まず、深い凹み欠陥が形成され、その領域が屈曲部となったのち、破断し、端点を形成するという機構を想定した。 表面構造の解析に関しては、試行錯誤が続いており、2024年度内に成果をまとめる計画である。現状、CNFを原子間力顕微鏡で液中観察する際、イオン化した官能基の水和構造が大きく、動きやすいため、観察しにくいことが判明している。 また、結束構造(結晶子合一)の解析についても、2022年度以降、継続して検討を進めてきた。結束構造の形成機構を理解するため、CNF分散液を徐々に脱水し、固形分率の異なるCNF試料を調製した。これらの試料について、CNFの結晶性を多角的に解析したところ、CNFの部分的な結束は、1%以下の低固形分濃度において著しく進み、1%に達すると安定なCNFの網目構造を形成すること、そして、さらに脱水を進めると、結束部を基点としてCNF間の会合が徐々に進んでいくことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欠陥部の解析に関しては、計画書に記載の通り、2023年度内に分布解析を完了することができた。分子量との相関については、2024年度にまとめる予定である。表面構造の解析がやや難度が高いものの、2023年度に糸口が見えたため、計画通り、2024年度内には達成できる見込みである。また、2022年度以降も継続して検討を続けてきた結束構造の解析に関しても、当初の計画よりも踏み込んだ成果が得られており、CNF材料の理解をさらに深めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、CNFの表面構造解析と、欠陥と分子量の相関を解析する予定である。
|
Research Products
(15 results)