2021 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態系におけるコウチュウ目ー微生物群集共生系の共進化動態解析
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21H04736
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 耕平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30272438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 紘士 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00508880)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 菌嚢 / 酵母 / 材食性 / 腐食連鎖 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
〇コウチュウ分類群の共生微生物のメタゲノム解析:本年度はホスト材のタイプが異なるルリクワガタ属3群の雌成虫菌嚢、消化管、幼虫の消化管、糞、ホスト材中の坑道壁等の解析サンプルを収集した。これらは次年度に解析予定である。 〇ホストコウチュウ目と共生微生物の共進化動態解析:本年度は材食性のルリクワガタ属、オニクワガタ属のホスト昆虫と共生酵母について系統解析を行い、共進化動態を考察した。この結果と過去気候データにもとづく分布予測を併用した結果、リス氷期後の間氷期に対馬あるいは九州周辺で過去にホスト昆虫の属間で、共生酵母の水平伝播が生じたことが推定された。 〇気候変動にともなうコウチュウ目分類群―微生物共生系の動態予測:日本産ルリクワガタ属全10種37個体群の共生酵母について成長上限温度と生存上限温度の変異を検討した。これらの酵母の高温耐性は暑い時期の最高温度と正の相関、降水量と負の相関を示した。また、同所的に分布し、同系統かつ同レベルの高温耐性を示す共生酵母を共有している2種の垂直分布下限が異なる現象について、夏季のホスト材の最高温度が異なることから説明可能であることが明らかになった。これらの現象は気候変動が進行した場合のコウチュウ目分類群―微生物共生系の共進化動態を検討する上で示唆を与えうるものである。 〇解析候補種の遺伝的分化、生態ニッチ分化解析:解析候補の材食性昆虫のルリクワガタ属、腐食連鎖に関わるオサムシ科の種について、解析ユニットを決定するための遺伝的分化、生態ニッチ分化解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の計画のうち、材食性昆虫の共生微生物のメタゲノム解析や共生機能解析に関しては、材料を収集の途中であり、次年度に解析を持ち越すこととなった。一方で、ホストコウチュウ目と共生微生物の共進化動態解析、気候変動にともなうコウチュウ目分類群―微生物共生系の動態予測については、予定以上に進展があり、成果の一部をそれぞれ原著論文として成果を公表することができた。全体としておおむね予定通りの進捗状況と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ルリクワガタ属の各種、各ステージ、各部位ごとにメタゲノム解析用のサンプル収集が進んでおり、2022年度に解析を実施する。また、共生系の機能解析についても、各種のクワガタムシ科の種で準備が進んでおり、共生微生物の垂直伝播プロセス、幼虫の成長・生存への貢献、各種糖類の資化能力等の検討を2022年度に実施する。また、腐食連鎖に関係するコウチュウ類に関する同様の解析は2023-2024年度に本格的に実施する予定で、2022年度にサンプルの収集や予備的な解析を開始する。
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