2021 Fiscal Year Annual Research Report
Functional analysis of natural cellulose using artificial cellulose and its application
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21H04739
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高野 俊幸 京都大学, 農学研究科, 教授 (50335303)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 昌久 京都大学, 農学研究科, 教授 (40270897)
寺本 好邦 京都大学, 農学研究科, 准教授 (40415716)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | セルロース / 鏡像異性体 / L-セルロース / D/L-セルロース / ステレオコンプレックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、天然セルロースがD-グルコースからのみから成る多糖(D体)であるのに対して、L-グルコースからのみ成る多糖(L体)およびD-グルコースとLグルコースの共重合体である(D/L体)の非天然セルロースを化学合成し、天然セルロースのキラル性が物性に与える影響を検討し、その知見を基に、D-セルロースのキラル性を利用した新しい高付加価値利用の開発を課題として挙げている。研究初年度、当初の研究計画に沿って研究を実施し、主な研究成果として、以下の3点が得られた。(1)セルローストリアセテート(CTA)のステレオコンプレックス:D-CTAとL-CTAを各々化学合成し、その等量混合物について検討したところ、等量混合物の熱的性質は、単独物の熱的性質とは異なることが判明し、CTAでも、ポリ乳酸の場合と同様に、ステレオコンプレックスを発現することが示唆された。(2)D/L-セルロースの合成とその性質:D/L比の異なる各種D/L-セルロースの合成に成功し、円二色性(CD)スペクトルの測定に課題を残すものの、それらの基礎データを収集することができた。D/L-セルロースは、D-セルロースやL-セルロースとは異なり、結晶性を示さず、非晶性セルロースであった。なお、これら2件の研究成果については、セルロース学会第28回年次大会で発表した。(3)D-キトサン由来の酸化触媒の合成:D-セルロースのキラル性を利用した不斉触媒の開発の手始めとして、キトサン(言い換えれば、2-amino-2-deoxy-D-celllulose)に鉄ポルフィリン構造を導入した誘導体を合成し、酸化触媒能を有していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予想通り、(1)D-CTAとL-CTAの等量混合物は、ステレオコンプレックスを発現していることが示唆された。(これは、多糖のステレオコンプレックスの最初の研究例である。)(2)(各合成段階の合成条件のさらなる最適化が必要であるものの)D/L-セルロースの合成法を確立することができ、D/L-セルロースが非晶性セルロースであることが判明した。また、本年度、鉄ポルフィリン構造を導入したD-キトサン誘導体も合成し酸化触媒能があること確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、研究が当初の研究計画に沿って順調に進展していることから、研究二年度では、研究初年度の検討事項を引き続き検討することとし、(1)セルロース誘導体のステレオコンプレックスの検討:CTAの化学合成の際に得られている中間体のセルロース誘導体についてもステレオコンプレックスを検討する。(2)D/L-セルロースの合成とその性質:課題として残った円二色性(CD)スペクトルの測定など種々の物性の検討を行う。(3)D-キトサン・D-セルロース由来の酸化触媒の合成:鉄ポルフィリン構造を導入したD-キトサンの不斉触媒反応への適用の検討とD-セルロース由来の酸化触媒の調製も図る。また、研究二年度では、セルロースのキラル性に由来するとされているセルロース誘導体の液晶性に関する検討も始める予定である。
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Research Products
(2 results)