2023 Fiscal Year Annual Research Report
白色腐朽菌―細菌複合微生物系構築による木材腐朽機構の完全解明
Project/Area Number |
21H04740
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (90526526)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 祐司 九州大学, 農学研究院, 教授 (30236921)
上村 直史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50646528)
|
Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
Keywords | バイオリファイナリー / 白色腐朽菌 / 複合微生物 / 微生物間相互作用 / リグニン / 木材腐朽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本提案研究では、複合微生物による木材腐朽の理解と、その応用による新規バイオリファイナリー技術の創生を目指して以下の2つの項目について研究を進めた。 1.白色腐朽菌Phlebia brevisporaの成長促進細菌であるEnterobacter属細菌の構成的な蛍光化を進めている。2023年度はmGold恒常発現株の作成に成功し、白色腐朽菌P. brevisporaとの共培養を実施した。寒天培地において、蛍光化したEnterobacter属細菌においてもP. brevispora菌糸の成長促進作用は確認されたが、mGoldと同波長と考えられる自家蛍光が菌糸から観察され、細菌の明確な挙動を追跡することが出来なかった。また、液体培地においても菌糸の成長促進とともに、液体中の細菌の消失が確認されたが、P. brevispora菌糸内への細菌の侵入は確認されなかった。細菌の挙動をより明確にするために、波長の異なる蛍光化細菌が必要との結論となった。 2.細菌は白色腐朽菌と協調的にリグニンを資化するかについて、カワラタケと腐朽材中に共存しているバニリン酸資化性細菌の一部は、木材腐朽およびリグニン分解に正の影響を与える。そこで低分子化された木材成分の挙動をGC/MSで追跡し、糖、有機酸、芳香族化合物が検出されたものの、細菌が存在することによりこれら成分が分解されることを指示する明確な定量的傾向は得られなかった。一方で、木粉中における細菌の生存について検討するために、腐朽試験後の木粉培地を蒸留水で抽出し、寒天培地で生じる細菌のコロニーを計測したところ、カワラタケを接種していない木粉に細菌を接種した場合は、細菌のコロニーが一切観察されない一方で、カワラタケとともに培養した木粉培地からは、細菌のコロニーが検出された。すなわち、木材中での細菌の生存には白色腐朽菌の存在が必須であることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蛍光化細菌の検出が白色腐朽菌菌糸の自家蛍光により困難であることが明らかとなり、別波長の蛍光化細菌の再構築が必要となった。共培養した腐朽木粉の分析では、リグニン分解物の定量的な分解挙動を追跡することが困難であることが明らかとなったため、腐朽した木材の抽出物を細菌に資化させる新しいアプローチの試験が必要になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
相互作用の可視化を目指して、白色腐朽菌Phlebia brevisporaの成長促進細菌であるEnterobacter属細菌の構成的なGFP蛍光化に取り組む。作成次第、共培養試験を行い、寒天培地および液体培地、木粉培地における細菌の挙動を明らかにする。 カワラタケと共存するバニリン酸資化性細菌との共培養について、木粉培地上ではリグニンの協調的資化を明らかにすることが困難であった。そこで、カワラタケにより腐朽した腐朽木粉からメタノール抽出物を調製し、これを炭素源とした細菌による分解試験を行う。細菌の増殖をモニターし、分解物をGCMSおよびLCで分析することにより、細菌により資化される白色腐朽菌分解物を同定する。その情報を基に、木粉培地でカワラタケと細菌との共培養を行い、共培養区および単独培養区において、先に同定した物質の挙動を追跡する。さらに、2023年度に明らかとなった、カワラタケ菌糸が存在することが、木粉上における細菌の生存に必須であるという新規な知見が得られた。これは、細菌と白色腐朽菌との安定的な共存を人工的に生み出すうえで非常に重要な知見であるため、評価法を至急確立するとともに、特定の細菌にのみ見られる現象か調査する。さらに、どのようなメカニズムで木粉中での細菌の生存を可能にしているかを明らかにするために、複数の仮説を立てて、立証する試験を実施する。
|