2021 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of genomic instability caused by environmental stress
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21H04761
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 武彦 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (40270475)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | ゲノム安定性 / リボソームRNA遺伝子 / クロマチン免疫沈降法 / ヒストン脱アセチル化酵素 / 非コードプロモーター / 酸性培地 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、酸性培地で酵母を培養するとゲノムの不安定領域であるリボソームRNA遺伝子(rDNA)が、安定化することを見出している。rDNAの不安定性に影響を与える要因として、1)DNA複製阻害配列での複製の停止、およびその結果生じるDNAの切断、2)非コードプロモーター(E-pro)の転写による姉妹染色分体の乖離、の2つがあげられる。これまでに、予備的ではあるが、酸性条件下ではDNA複製阻害配列での停止頻度に変化はないこと、非コードプロモーター(E-pro)の転写産物量が低下していることを見出していた。そこでデータベースから検出した転写活性に関わるヒストン修飾関連の遺伝子(59個)を選び出し、それらをノックアウトして、酸性条件下でのrDNAの安定性に与える影響を調べた。その結果、いくつかの候補遺伝子を得ることに成功し、中でも1番顕著な、つまり酸性条件下でもrDNAの安定化がみられなくなったrpd3欠損株の解析を中心に行なっている。Rpd3はヒストンの脱アセチル化酵素(HDAC)で、転写の抑制作用をもつことが知られている。作業仮説としてはRpd3が酸性条件下で、E-proの転写を抑制し、rDNAを安定化していると考えられる。 当該年度はまず、酸性条件下ではDNA複製阻害配列での停止頻度に変化がないこと、非コードプロモーター(E-pro)の転写産物量が低下していることを、それぞれ二次元アガロース電気泳動法およびノーザン解析で確認した。また、酸性度に依存したRpd3のrDNAへの結合および局在の変化を、クロマチン免疫沈降法を用いて調べた。コロナ禍で研究に用いる資材、特にPCR関連の試薬の入手が困難となるなど、想定外のトラブルが生じ、繰越の上、ようやくクロマチン免疫沈降法を実施することができた。今のところはまだデータが安定しておらず、条件検討を行いながら引き続き解析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
rDNAが安定化する酸性条件下では、DNA複製阻害配列での停止頻度に変化はないこと、非コードプロモーター(E-pro)の転写産物量が低下していることを、それぞれ二次元アガロース電気泳動法およびノーザン解析で確認した。これらの結果から、酸性条件下で非コードの転写調節因子が影響を受けていると考えられ、ゲノム安定化のメカニズムの解明に一歩近づいた。
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Strategy for Future Research Activity |
酸性条件下で非コードの転写調節機構についての解析を進めていく。クロマチン免疫沈降法については、ヒストン修飾の関わる因子では、はっきりとしたDNAに対する結合が見られない可能性もあり、条件検討を重ねつつも別の解析方法も検討する。
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