2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative chemical genomic analysis on plant parasitism
Project/Area Number |
21H04775
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土屋 雄一朗 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任教授 (00442989)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 寄生植物 / 植物ホルモン / 蛍光プローブ / 化学屈性 |
Outline of Annual Research Achievements |
寄生植物は、植物形態の基本的な枠組みを逸脱することなく、動物のように従属栄養として生きる能力を独自に進化させた高等植物である。本研究では、独自に収集した宿主依存度の異なる寄生植物コレクションを用い、生物種を問わずに機能レベルでの解析を可能とする低分子プローブを活用することで、寄生植物が宿主の根に向かって伸張する「化学屈性」と呼ばれる未だ実態の明らかとなっていない能力の存在を立証する。 本年度は、野外から収集したハマウツボ科の寄生植物より、化学屈性の解析に適したものを選抜し、誘引因子の特徴づけと阻害剤や蛍光プローブを用いたタイムラプス解析等を行った。根の伸張方向を調べる上で、発芽後に死んでしまう絶対寄生植物より条件半寄生植物が適切と考え、寄生植物コレクションより3種(ヒサウチソウ、セイヨウヒキヨモギ、コシオガマ)について調べたところ、セイヨウヒキヨモギが宿主植物であるヨモギによく誘引されることを見出した。シャーレで誘引を定量的に解析する手法を開発し、それを使って宿主の根から放出される誘引因子について調べ、水溶性の成分からは根の伸張方向をランダムにするものが発見された。HPLCによる化学分析より、その活性成分はストリゴラクトンと同じ保持時間を持ち、ストリゴラクトンを分解するHTLタンパク質で根のランダムな方向への伸張を起こす活性が消失したこと、人工ストリゴラクトンであるGR24で同様の活性が見られたことから、この活性成分がストリゴラクトンであると結論づけた。さらに、ただランダムにするだけではなく、根の重力応答を完全に抑圧することから、条件半寄生植物におけるストリゴラクトンの機能は、重力屈性の抑制と考えられた。また、阻害剤と蛍光プローブを用いた実験より、植物ホルモンであるオーキシンの極性輸送の制御を介してこの反応が起こることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ストライガを用いてストリゴラクトンが誘引因子であることを立証する計画であったが、モデル系をセイヨウヒキヨモギに変更することで定量的な解析、化学遺伝学的な解析、蛍光プローブを用いたオーキシン局在の解析等が可能となった。さらに、真の誘引因子が揮発性成分であることを示唆する結果も得ており、ストリゴラクトンと真の誘引因子がオーキシンの極性輸送の制御を介して根の身長方向を決定するといった、本来最終目標としていた遺伝回路の基礎的な枠組みの概要が見えつつある。したがって、当初の計画より大幅な進展があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下に述べる二点にフォーカスを当て、研究を進める。(1)オーキシンの極性輸送をアウトプットに、ストリゴラクトンと揮発性因子の相互作用の解析を行う。異なる輸送体を標的するオーキシン輸送阻害剤を用い、ストリゴラクトンと揮発性因子それぞれへの作用を検討することで、どの輸送体が関与するかを明らかとする。さらに、これら因子が蛍光オーキシンの局在に与える影響、輸送阻害剤の影響等の観察を行う。(2)揮発性因子の同定を行う。現在、根から放出される揮発性因子を回収する手法のセットアップを進めている。根をゲルの表面に這わせて生育したものの空間部分を、シャーレペリスタポンプでC18カートリッジやDMSO等の有機溶媒に送り込み、それをゲルに加えて誘引を行う試験を行なっている。回収が確認でき次第、スケールアップを行い、GC-MSによる構造同定を試みる。
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