2022 Fiscal Year Annual Research Report
A study for the construction and application of Jomon iPS cells
Project/Area Number |
21H04779
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 博樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40401228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 貴文 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20184533)
立石 敬介 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (20396948)
野崎 智義 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (60198588)
和久 大介 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (60793578)
覚張 隆史 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 助教 (70749530)
大橋 順 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80301141)
今村 公紀 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 助教 (80567743)
田辺 秀之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (50261178)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 縄文人 / ゲノム / アレル / 薬剤添加 / エタノール / アセトアルデヒド / 肝細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
培養リンパ球の薬剤添加実験(1)と不死化リンパ球由来iPS細胞から肝細胞分化誘導実験(2)をおこなった。
(1)不死化処理した現代日本人由来のリンパ球(8ライン)を使用した。添加薬剤は、エタノールとアセトアルデヒドである。それぞれ、先行研究の臨床的にヒト生体で、中度から高度の酔い状態になる濃度を添加し、RNA シークエンシングによるトランスクリプトーム解析を行った。得られたリードの解析は、ブラウザ上の解析プラットフォームであるRaNA-seqを使用し発現量の変動を示す遺伝子の検出を行なった。さらにブラウザ上の解析ツールであるMetascape をもちいてGene Ontology(GO)解析をおこなった。エタノール添加後に発現量の変動を検出した遺伝子数は38個で、免疫関連遺伝子の発現量が減少する傾向が見られた。アセトアルデヒド添加後に発現変動が検出された遺伝子数はたった4個であった。 (2)Katagamiら(2020)の方法を部分的に変更したプロトコルで胚体内胚葉への分化、さらに肝細胞hの分化誘導実験をおこなった。分化の確認は、マーカータンパク質による免疫染色およびqPCRでおこなった。マ肝細胞への分化のマーカーとしてCYP3A4およびALBの一次抗体をもちいた。その結果、ALBは発現を確認することができなかった一方、CYP3A4は発現を確認することができた。このように、分化効率は100%ではないものの、肝細胞への誘導がある程度は達成されたことが示唆された。さらにqPCRによりALB、CK18、TDO2、およびシトクロムP450スーパーファミリーに含まれる3個の遺伝子(CYP3A4、CYP1A2、CYP3A7)の6個の肝細胞マーカー遺伝子をもちい確認をおこなった。その結果、CYP1A2の発現量が未分化状態に比べ減少したものの、他の遺伝子は発現量の上昇が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験(1)では、私たちの研究室の先行実験の結果と同様に、免疫関連遺伝子の発現量の減少が観察された。しかし、先行実験との間で再現性をとることができない結果もいくつかあった。発現変動遺伝子の種類は、再現性がみられたものの、一番大きな違いは、発現変動遺伝子の数である。この原因は複数考えられるが、薬剤添加実験までの細胞培養日数の違いなどが、関係している可能性がある。 実験(2)の目標である肝細胞分化手法の確立は、肝細胞に分化した細胞の存在を示すことができことで、部分的に達成されたと考えられる。しかし分化誘導後の細胞には、成熟した肝細胞以外の細胞が多く含まれていた可能性が高い。分化していない細胞がノイズとなりRNAシークエンシングとその先の解析結果に影響を与える可能性が大きい。このように、分化効率や成熟度に課題が存在する。これらの課題を克服するために、今後はまず内胚葉分化誘導の播種細胞数、分化誘導を行う期間に注目し改善する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
培養リンパ球をもちいた実験では、先行実験と再現性がない結果が一部みられた。これらの結果を再検討し、再現性が得られないかった原因を明らかにする必要がある。その上で、トランスクリプトーム解析の結果を再解析し、エタノールおよびアセトアルデヒド添加に際して普遍的に観察される細胞の変化を明らかにすることを今後の第1の課題と考えている。 iPS細胞から肝細胞への分化誘導実験は、まずは現在のプロトコルで再現性があるか、示す必要がある。今後はさらに、そのプロトコルの最適化も進める。また現時点では、不死化リンパ球から誘導したiPS細胞のゲノムや染色体が、正常な状態か不明である。今後は、これらを全ゲノムシークエンシングや核型解析で確認する。免疫染色は限られた数のマーカータンパク質をもちいて実施したが、より体系的に免疫染色とqPCRによる分化の確認を行う必要がある。現時点ではiPS細胞の未分化能の確認もおこなっていない。今後は、こうした課題を1つ1つ解決し、iPSC由来肝様細胞をもちいた薬剤添加実験を実施する。
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