2021 Fiscal Year Annual Research Report
睡眠と覚醒状態における匂いの脳内表現の差異とそのメカニズムの解明
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21H04789
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
風間 北斗 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (90546574)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Keywords | 嗅覚情報処理 / 睡眠 / 行動状態 / イメージング / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、二光子励起顕微鏡下でショウジョウバエ成虫の嗅覚回路の活動と同時に動物の行動を計測するシステムを構築した。ハエの頭部及び胸部を記録用のプレートに固定した後に、下部から与えられた空気で浮いたボール上に足が触れるよう動物をポジショニングすることで、ハエがボール上を歩行できるようにした。ボールの動きをカメラとソフトウェアで捉えることで、ハエの歩行を定量した。同一のカメラでハエの動きも直接観察できるようにした。 行動中のハエから神経活動を計測するために、記録用のプレートに固定したショウジョウバエの頭部表皮を一部取り除くことで脳を露出させ、生理食塩水を循環させながら、水浸レンズを通して脳を観察できるようにした。神経活動の計測には、一度に多数の細胞を調べるのに適したカルシウムメージング法を用いた。対象は嗅覚二次中枢キノコ体とした。LexAシステムを用いて約2,000個全ての主要細胞(ケニオン細胞)にカルシウム指示薬GCaMP6fを発現させた。近年当研究室で開発した、キノコ体の神経細胞群の応答を自動的に抽出するアルゴリズムを更に改良することでデータ解析を行えるようにした。その結果、キノコ体に属する全ケニオン細胞の活動と動物の歩行行動を同時に解析するプラットフォームを構築することに成功した。これにより、動物の行動状態や睡眠・覚醒状態依存的に匂いの情報処理がキノコ体でどのように変化するかを調べる準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二光子顕微鏡下で嗅覚回路の活動と同時に動物の行動を計測するシステム及び、そこから得られる神経活動と行動データを解析するアルゴリズムを構築したことで、来年度以降、動物の行動状態や睡眠・覚醒状態依存的に匂いの情報処理がキノコ体でどのように変化するかを調べる準備が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築したプラットフォームを用いてデータの取得を進め、運動と安静、もしくは睡眠と覚醒状態における匂いの脳内表現の差異の解析に取り組む。より具体的には、キノコ体に着目し、以下の仮説の検証を行う。 (1)睡眠時には知覚が消失することから、匂い応答が低減したり、匂いの脳内表現が正常な構造を失ったりする。 (2)睡眠欲求度が高い状態では匂いの同定能力が下がることから、断眠後には匂い応答の低減や試行間のばらつきの上昇、または匂いの脳内表現の構造変化が起こる。 (3)匂いの快・不快の種類に応じて匂い応答の低減程度が異なる。 (4)睡眠中に提示された匂いが記憶の定着を促進する等の機能を持つため、睡眠時にも一定の、意義のある情報処理が残存する。
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Research Products
(5 results)