2022 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of novel tissue-specific stem and progenitor cells responding to Wnt signaling
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21H04797
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菊池 章 大阪大学, 感染症総合教育研究拠点, 特任教授(常勤) (10204827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 真司 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20572324)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | Wntシグナル / 組織幹細胞 / 唾液腺 / AQP3 / 腺細胞 / 扁平上皮 / 食道 / ジフテリア毒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度に作製したAQP3-CreERT(AQP3の開始コドン直下にCre-ERT2を挿入した改変マウス);Rosa-STOP-YFPマウスを用いて、AQP3陽性細胞の系統追跡解析(Lineage tracing analysis)を行った。唾液腺においては、生理的にはYFP陽性細胞の発現を認めなかったが、導管結紮後の傷害唾液腺組織においては導管部にYFP陽性細胞が出現した。その後、結紮解除後3週間の組織修復時においては、唾液腺全体にYFP陽性細胞(AQP3陽性細胞の子孫細胞)が確認された。この結果から、導管結紮後の唾液腺障害からの修復過程にAQP3陽性細胞が関与することが明らかになった。生理的(非傷害時)にAQP3が発現する食道上皮においては、タモキシフェン投与直後にはYFP陽性細胞が基底層近傍に認められ、投与60日後には重層扁平上皮の表層までYFP陽性細胞が拡大した。この結果から、食道上皮においてAQP3陽性細胞が恒常的な重層扁平上皮の維持に関与している可能性が示唆された。一方、AQP3陽性細胞を除去する目的で、AQP3-2A-CreERT2(AQP3の終止コドン直下にT2Aを介してCreERT2を挿入した改変マウス);Rosa-STOP-DTRマウスを新たに作製した。AQP3-2A-CreERT2マウスはCreERT2の発現量がAQP3-CreERT2マウスよりも高く、細胞除去解析に有用である可能性が示唆された。実際、AQP3-2A-CreERT2;Rosa-STOP-DTRマウスの食道からオルガノイドを作製し、DT(ジフテリア毒素)を投与したところ、AQP3陽性細胞が除去されることが確認された。本改変マウスを用いて、生体内でAQP3陽性細胞を除去し、唾液腺の修復や食道上皮の維持に与える影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画①「AQP3陽性細胞による組織構築」について、当初の計画に従ってAQP3-CreERT2;Rosa-STOP-YFPマウスを用いて、系統追跡解析を行い、傷害唾液腺および食道上皮においてAQP3陽性細胞の動態を解析することができた。唾液腺の導管結紮による組織障害からの修復過程において、AQP3陽性細胞が修復組織に広範に分布し、組織修復に関与すること、また生理的な条件下でAQP3を発現している食道粘膜上皮においても、組織の維持にAQP3陽性細胞の関与を明らかにすることができた。研究計画④「AQP3陽性細胞の生理的意義」については、令和3年度に作製したAQP3-CreERT2マウスにおいてCreERT2の発現量が低く、系統追跡は可能であったが、Rosa-STOP-DTRとの組み合わせによる細胞除去解析を行うことが困難であった。そこで新たにAQP3-2A-CreERT2マウスを作製し、CreERT2の発現量を改善することが出来た。本改変マウスを用いて、AQP3陽性細胞の除去が唾液腺の傷害修復と食道上皮の維持に与える影響の解析を開始している。これら令和4年度の成果をもとに、研究計画②「AQP3陽性細胞の性状解析」や③「腺上皮の扁平上皮転換機構」についても現在研究を進めており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた成果をもとに、今後は以下の研究計画を遂行する。 1. Wnt誘導性の唾液腺の扁平上皮転換機構を明らかにする。Wnt誘導性腺-重層扁平上皮オルガノイド、または唾液腺の傷害修復過程では、AQP3に加え、Krt13, Krt10, Lor, Tgm等の扁平上皮マーカーの発現がWntシグナル依存性に上昇する。そこで、WntシグナルによるAQP3および扁平上皮マーカーの発現制御機構を明らかにするために、唾液腺オルガノイド、Wnt誘導性腺-重層扁平上皮オルガノイドからそれぞれ細胞を調整し、ATACシークエンス解析を行う。AQP3および扁平上皮マーカー遺伝子上流のオープンクロマチン領域を同定し、遺伝子発現を制御する転写制御因子の予測を行うことで、Wnt依存性扁平上皮転換の制御機構を明らかにする。 2. 唾液腺と食道以外の臓器におけるAQP3陽性細胞の関与を明らかにする。AQP3は食道の重層扁平上皮に加えて皮膚、舌、子宮、膀胱等の他の重層扁平上皮組織においても発現する。舌や食道についてはオルガノイド培養法が確立しているので、オルガノイド内でのAQP3陽性細胞のin vitro系での統追跡解析ならびに機能解析を行う。 3. AQP3陽性細胞の生理的および傷害修復時の組織化における意義を明らかにする。令和4年度に作製したAQP3-2A-CreERT2;Rosa-STOP-DTR(ジフテリア毒素受容体)マウスでは、ジフテリア毒素投与によってAQP3陽性細胞を除去することが可能である。本マウスにジフテリア毒素を投与し、食道、皮膚、舌などの重層扁平粘膜上皮に与える影響を明らかにする。また、健常マウスと唾液腺傷害モデル(導管結紮)の治癒過程におけるAQP3陽性細胞の除去が、CXCR2の発現や扁平上皮転換に与える影響を明らかにする。
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[Journal Article] RAF1-MEK /ERK pathway‐dependent ARL4 expression promotes ameloblastoma cell proliferation and osteoclast formation2022
Author(s)
Shinsuke Fujii, Takuma Ishibashi, Megumi Kokura, Tatsufumi Fujimoto, Shinji Matsumoto, Satsuki Shidara, Kari J Kurppa , Judith Pape, Javier Caton, Peter R Morgan, Kristiina Heikinheimo, Akira Kikuchi, Eijiro Jimi, Tamotsu Kiyoshima
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Journal Title
The Journal of Pathology
Volume: 256
Pages: 119~133
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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