2022 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive understanding and novel therapeutic approaches for spliceosome mutant cancers
Project/Area Number |
21H04828
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
吉見 昭秀 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80609016)
|
Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
|
Keywords | RNA splicing / Cancer / ASO / Multi-omics analysis / Bladder carcinoma / Thymoma / Leukemia / RNA binding protein |
Outline of Annual Research Achievements |
RNAスプライシングとは、DNAを鋳型にしてできる未成熟なRNAからイントロンと呼ばれる配列を除去し、成熟したRNAを作り出すプロセスのことを指す。がんにおいて、スプライシングを司るスプライシング因子に高頻度に異常(遺伝子変異)が生じていることが近年のゲノム解析の結果わかってきた。本研究では様々ながんに高頻度に認められるスプライシング異常の発生機序や病理学的役割の解明を通して治療標的を探索する。そのために、我々はがん横断的にスプライシング解析を実施し、例えば膀胱がんには膀胱がんにしか出現しないスプライシング因子の遺伝子変異が存在することを見出し、同変異が免疫関連シグナルを活性化することを見出し、現在さらにin vivoにおける発がんへの寄与などを詳細に検討中である。また、CRISPR-Cas9技術を用いたRNA結合蛋白質(RBP)の機能的なスクリーニングを実施し、ある肉腫が依存して生存しているRBPを1種類特定した。同RBPについても、下流シグナルやRNA結合部位の解析を実施し、同肉腫に特異的にみられる融合遺伝子の下流シグナルの活性化に必須の因子であることを見出した。さらに、スプライシング異常を有するがんに対し、がん発症の鍵となるようなスプライシング異常を特異的に修正する核酸医薬療法を開発している。また、スプライシング因子に遺伝子変異がないにもかかわらず強い(グローバルな)スプライシング異常を有するがん種において、その原因となるRBPを同定し、また同がん種において、薬理学的スプライシング阻害に対する感受性が高いことを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は留学から帰国し、2020年7月に国立がん研究センターで研究室を立ち上げて3年弱になる。研究室メンバーも研究資金もゼロの状態からの立ち上げとなったが、現在、本研究を推進する常勤研究員・ポスドク・後期博士課程大学院生を含めて総勢19 名の研究室となり、様々な角度からがんのスプライシング異常について検討を進める研究室が立ち上がった。立ち上げにかかる労力・時間を加味しても、研究開始2年度でCRISPRスクリーニングシステムや動物実験、バイオインフォマティクス解析、臨床検体利用の枠組みなど本研究の推進に必須となる研究環境のセットアップが完了し、上記の研究成果を上げることができたことから、順調な進捗と考えている。特に、がん横断的スプライシング解析では、1万例を超えるデータの解析を実施しており、膀胱がん特異的スプライシング因子の遺伝子変異について、詳細な機能解析を進める段階まできている。また膀胱がんにおいては500例弱のオミクスデータの解析にも着手し、様々なバイオマーカーに関する検討を進められている(submitted)。また、がん横断的解析の裏付けとなる臨床データと臨床検体を用いた次世代シークエンスデータの取得も神経膠腫や膀胱がん、胸腺腫など、本研究の中核をなすがん腫を中心として順調に進捗している。また、核酸医薬についても標的とする遺伝子において効率的なsplicing switchingを誘導するantisense oligonucleotide (ASO) の配列取得に成功しており、本研究の出口戦略の一つとして注力している。これらの進捗は想定以上であり、当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も原則として当初の研究計画をベースとして研究課題全体を推進する予定である。具体的には、がん横断的スプライシング解析同定した膀胱がん特異的スプライシング因子の遺伝子変異について、正常組織、同変異陽性膀胱がん、同変異陰性膀胱がんで網羅的なスプライシング解析を実施し、同変異に特異的なスプライシング異常を鋭敏に検出し、病態解明につなげると同時に、遺伝子発現解析、CIBERSORTx、Ecotyperなどを用いて同変異陽性膀胱がんを特徴づけるようなパスウェイ、腫瘍微小環境などを詳細に調査する。核酸医薬療法の開発に関してはSRSF2変異によるスプライシング異常の修正に引き続き注力し、これまでに修正に成功していないスプライシングイベントについては、周辺領域のRNAに結合するスプライシング因子を質量分析で同定した上で標的配列を絞り込むなどの手法を併用して成功率を上げる試みに取り組む。また、非臨床POCの獲得に向けてマウスモデルやPDXモデルを用いた実験系で薬効評価を行い、企業導出や知財獲得を見据えた創薬開発への道筋をつけることに注力する。スプライシング因子に遺伝子変異がないにもかかわらず強い(グローバルな)スプライシング異常を有するがん種については、神経膠腫における原因RBPの同定に成功したが、同様の手法を用いて胸腺腫に関しても注目する遺伝子変異により誘導されるスプライシング異常の原因RBPの同定に取り組む。また、遺伝子変異をノックインした細胞株を樹立することにより、詳細な分子生物学的・細胞生物学的検討を行い、有望な薬剤が同定されればCDXモデルなどで薬効を評価する。上記の推進方策は研究計画立案当初から大きな変更はなく想定の範囲内であるが、今後生じるであろうトラブルにも引き続き柔軟に対応することにより研究全体の進捗を図る。
|
Remarks |
Lab website https://www.ncc.go.jp/jp/ri/division/cancer_rna/index.html
|
Research Products
(32 results)