2023 Fiscal Year Annual Research Report
最新分子生物学的アプローチによる放射線感受性メカニズムの解明
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21H04844
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
千葉 満 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (20583735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門前 暁 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (20514136)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 放射線感受性 / 放射線抵抗性 / マイクロアレイ / A549 / ラジオロミクス解析 / バイオインフォマティクス / データベース / DNA修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
①放射線抵抗性肺癌細胞株(A549-RR)の樹立:肺癌の放射線抵抗性細胞にどのような特徴があるか調べるために、放射線治療スケジュールを参考にヒト肺癌細胞株(A549)へ2 GyのX線を週5回照射し、トータル60 Gy照射して増殖してきた生存細胞をA549-RRとした。 ②A549-RR細胞株の特徴:A549-RR細胞の放射線抵抗性と特徴を調べるために、X線照射によるColony Formation Assay、細胞サイズ測定、細胞周期解析、アポトーシス解析を行った。その結果、A549-RR細胞はA549細胞に比べて、有意なコロニー形成能の維持、細胞サイズの小型化、G2/M phase細胞割合の増加、アポトーシスの抑制を示した。これらの結果から本研究で樹立したA549-RR細胞には放射線への抵抗性を有することが示唆された。 ③A549-RR細胞株の遺伝子発現解析:A549細胞と放射線抵抗性A549-RRにおいてどのような遺伝子発現変化が生じているか調べるために、マイクロアレイ解析を行った。発現変化のある遺伝子がどのパスウェイに関連するか推定するために、関連機能の予測を行った。発現変動した遺伝子が関わるパスウェイを予測したところ、ミスマッチ修復、アポトーシス、細胞周期チェックポイントなどのパスウェイへの関連が示唆された。同時に放射線抵抗性A549-RR細胞株へ放射線照射後における遺伝子発現応答性の解析も進めており、特にDNA修復関連遺伝子発現の上昇が顕著であった。現在、新規放射線抵抗性関連遺伝子の改変細胞の樹立を進めている。 ④A549-RR細胞株から分泌される細胞外小胞の解析:放射線抵抗性を獲得したA549-RR細胞株からどのような成分が分泌され、周辺細胞へ影響を与えるか調べるために、細胞外小胞に着目し、miRNAをはじめとした細胞外小胞内成分の分析を現在行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
○放射線抵抗肺癌細胞株A549-RRの作製(達成度100%) 肺癌細胞株A549に週5日1回2 GyのX線(1.0 Gy/min)を照射し、トータル60 Gy照射して生存したA549細胞を放射線抵抗性肺癌細胞株(A549-RR)とした。樹立したA549-RRの特徴を調べたところ、放射線抵抗性を示す結果が得られた。 ○放射線抵抗肺癌細胞株A549-RRにおける遺伝子発現変化と遺伝子改変細胞の作成(達成度100%) A549とA549-RRにどのような遺伝子発現変化が生じ、また放射線応答性にどのような遺伝子発現の違いが生じるか、マイクロアレイ解析を行い、放射線抵抗性に強く関連する既知遺伝子や新規遺伝子を同定した。現在これらの遺伝子の改変細胞の作製をおこなっており、放射線抵抗性に関連する遺伝子であるか明らかにする。また、放射線抵抗性獲得が周辺細胞へ影響を与えることが知られており、現在細胞外小胞エクソソームの分析も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度はこれまでの課題を引き続き遂行するとともに、以下の課題を検討する。 ①放射線抵抗性関連遺伝子を改変した細胞株において、放射線照射により放射線感受性にどのような影響を与えるか明らかにする。 ②放射線抵抗性細胞株や放射線抵抗性関連遺伝子の改変細胞が周辺微小環境にどのような影響を与えるか明らかにする。 上記の解析を進め、得られた研究成果を学会発表や論文として報告する。
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