2021 Fiscal Year Annual Research Report
運動が海馬機能を増強するメカニズムの統合的解明:動物からヒトへの橋渡し研究
Project/Area Number |
21H04858
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
征矢 英昭 筑波大学, 体育系, 教授 (50221346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 正洋 筑波大学, 体育系, 助教 (30726617)
グレニエ フランソワ 筑波大学, 体育系, 研究員 (90738692)
Yassa Michael 筑波大学, 体育系, 教授 (90817610)
永野 敦子 筑波大学, 体育系, 研究員 (90897886)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Keywords | 海馬 / 低強度運動 / 認知機能 / ドーパミン / レプチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、誰もが意欲的に継続可能な低強度運動が海馬を刺激し記憶を増強させるメカニズムを、青斑核 (LC) ―海馬ドーパミン (DA) 系に着目し、動物―ヒト橋渡し研究により徹底検証することで、強固な神経科学的エビデンスを有する海馬機能増強戦略として提案することを目指す。3年計画の1年目である令和3年度は、実験計画に従いプロジェクト1~3を実施した。 プロジェクト1では、低強度運動による海馬機能増強にはLC―海馬DA系が関与するかを検証すべく、特定の神経細胞の活動を操作できるDREADDの導入を行った。現在、DREADDで低強度運動時のLCの神経活動を操作し、海馬機能への影響を確認する実験が進行中である (課題1-1)。 プロジェクト2では、ヒトにおいても低強度運動中にLCが活性化するか、LC動態を間接的に予測する瞳孔径から検証した。その結果、低強度運動中に瞳孔径は拡張を確認した。さらにその拡張は、その後の前頭前野が関与する認知機能成績向上を予測した。今後は、DAとの関与を探るとともに、この実験モデルを海馬課題に応用し検証する予定である。 プロジェクト3では、海馬機能が低下した病態モデル動物 (ADモデルマウス・PTSDモデルラットなど) に対する適切な運動介入の条件検討を開始するともに病態に対する運動効果の評価法の導入を進めた (課題3-1)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト1では、DREADDの導入を進め、LCに対する作用を評価できた。これに加え、in vivo電気生理学やマイクロダイアリシス、海馬機能を評価する行動試験など、低強度運動効果に対するLC-海馬DA系の関与を評価する実験のセットアップは充実しており、次年度の進展が十分に期待できる (課題1-1)。 プロジェクト2では、これまで私たちが検証を行ってきた一過性の低強度運動中にLCが活性化していることが瞳孔径動態から確認できた。海馬課題を併せて検証する準備が整っており、さらなる検討が可能となる。 プロジェクト3では、海馬機能が低下したモデル動物に対する低強度運動効果として、病態改善に関与する脳領域ネットワークの変化が示唆された。プロジェクト1で確立するDREADDなどを応用し、詳細なメカニズムの検討が可能と期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト1では、低強度運動による海馬機能増強に重要な役割を果たすと想定されるLC―海馬DA系をDREADDを用いて抑制し、一過性の低強度運動による海馬神経の活性化や慢性的な低強度運動による海馬可塑性・記憶の向上への影響を確認する (実験1-1)。また、運動効果を最大化する低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用戦略において、責任分子となる海馬レプチンとDAの関連を検討する (実験1-2)。 プロジェクト2では、低強度運動中の瞳孔拡張が前頭前野認知機能だけでなく、その後に起こる海馬パターン分離機能の向上を予測するか検証を行う。さらに、アミノ酸を用いたDA枯渇を用いて、ヒト海馬機能に対するDAの関与の検証に移行する予定である。 プロジェクト3では、海馬機能の低下を呈する動物 (ADモデルマウス、PTSDモデルラット、統合失調症モデルマウスなど) を用いて、低強度運動による病態改善やDAの関与を詳細に検討する (課題3-1)。
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