2022 Fiscal Year Annual Research Report
栄養環境の変化を認識する短鎖脂肪酸受容体を介した神経・免疫・代謝制御
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21H04862
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 郁夫 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (80433689)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Keywords | 短鎖脂肪酸 / GPCR / 脂肪酸受容体 / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題においては、食・栄養シグナルとしての、短鎖脂肪酸受容体を介した代謝制御機構における包括的エネルギー代謝ネットワークの全容解明を目的とする。特に腸内環境により変化する短鎖脂肪酸や栄養成分が血中を介して、各組織に発現する短鎖脂肪酸受容体の機能を制御することにより、宿主のエネルギー代謝ネットワークにどのように貢献するかについての統合的理解を目指す。 当該年度においては、 ①短鎖脂肪酸受容体GPR41およびOlfr78それぞれの胎児期・哺乳期でのKOマウスにおける交感神経節でのRNAseqを行った結果、それぞれの時期で、野生型マウスとの比較の結果、GPR41KO、Olfr78KOにおける交感神経の発達に関連する遺伝子群の変動が確認された。これらの変化はGPR41とOlfr78KOマウスで全く異なっており、これは、GPR41やOlfr78が同様に短鎖脂肪酸をリガンドとするにも関わらず、その作用時期と機能が全く異なることを示唆する結果であった。 ②腸内細菌叢が関与する脂肪細胞ベージュ化、に関しては、GPR43floxマウスを用いて、UCP-1-CREマウスおよびadiponectin-CREマウスとの掛け合わせを行い、脂肪組織特異的GPR43欠損マウス作出の準備を進めた。 ③腸管ホルモン分泌過程における短鎖脂肪酸受容体の協奏メカニズム、に関しては、短鎖脂肪酸受容体GPR41、GPR43、Olfr78それぞれのKOマウスより腸管オルガノイド作出を行った。 ④食品成分による短鎖脂肪酸受容体の新たな作用、に関しては、我々の着目する食品成分とその代謝物群に関して、そのターゲット組織が肝臓であることを明らかにした。また、その代謝物による代謝機能改善効果が、短鎖脂肪酸受容体欠損マウスで消失したことから、その効果に何らかの短鎖脂肪酸受容体シグナルが関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において基礎データの取得や実際に遺伝子欠損マウスを用いた生体機能解析が進み、肝となるデータも得られ、いくつかは論文として纏められる状況に差し掛かっている。したがって、本研究課題は現状、順調にその研究計画を進行できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
腸内細菌叢による神経支配とエネルギー代謝、に関しては、無菌マウスでのRNAseqや交感神経節におけるシングルセル解析へ展開する。 腸内細菌叢が関与する脂肪細胞ベージュ化、に関しては、脂肪組織特異的短鎖脂肪酸受容体欠損マウスの作出を進める。 腸管ホルモン分泌過程における短鎖脂肪酸受容体の協奏メカニズム、に関しては、短鎖脂肪酸受容体欠損腸管オルガノイドを用いた腸管ホルモン分泌変化についての検討を行う。 食品成分による短鎖脂肪酸受容体の新たな作用、に関しては、食品成分とその代謝物に関して論文化にむけて無菌マウスでの検討を進める。
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