Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋田 純一 金沢大学, 融合科学系, 教授 (10303265)
森本 淳 京都大学, 情報学研究科, 教授 (10505986)
戸田 真志 熊本大学, 総合情報統括センター, 教授 (40336417)
安 ち 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (70747873)
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Outline of Annual Research Achievements |
(a) パワーアシストによる動作支援の設計とその基礎的性能の確認: 令和3年度に,安(分担者)が実装したイス型の立ち上がり支援デバイス,および,理研GRPの協力による人工筋による膝のパワーアシスト機器を用いた立ち上がり支援の実験が可能となった.これらの2つのデバイスが個々に動作する場合に加え,同時に作用する場合の制御方法を検討・実装し,複数のデバイスの協調による支援の可能性やその良さの分析を進めた. (b‐1) 筋活動,姿勢等の計測による動作解析と動作予測: 令和3年度に整備を行った筋電位および姿勢の統合計測システムを用い,デバイス装着時の筋電位・姿勢計測を進め,アシスト量の変化による筋張力,姿勢などの変化を計測し,条件が変化した場合の振る舞いの変化や安定性などを分析する環境を整え,予備的な研究成果を発表した. (b‐2) 筋シナジーに基づいた制御の実装と分析: アシスト機器の装着時のキャリブレーションを簡易なものとしつつ安定した動作を可能にする手法を検討し,ブリストル大学と共同でアシスト機器の装着メカニズムの設計を始めた. (c) 注意状態によるアシスト量の制御: パワーアシスト機器を本人の意図に応じて安全に制御するための方法として,筋活動の計測による動作予測に着手し,短時間後(500msec以下)の予測が可能であることがわかってきた. (d) 自信・QOL指標の計測と推定: 「比較を基にした表情認識手法」によって,連続した表情変化(特に笑顔)を安定に定量化することが可能であることを確認し,それに加え,ネガティブな表情についても指標化できることをしめした.さらに,心拍などの計測を併用して,人間の内部状態の時間的変化を計測する手法を試み,その結果を発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2022年度の予算を一部繰越し,2023年度に執行した.そのため,本項は2023年度末の状況報告となっている. a) パワーアシスト機器がユーザの意図に応じて動作する計測・制御について,概ね実現可能性を示すことができた.筋活動計測を用いることによって動作予測が可能であること,それによってアシスト機器起動に対する遅延補償が可能であることを示してきた.立ち上がりのように急激に筋活動が起こる場合には,各筋シナジーを予測できる範囲が100‐400msec程度とばらつくことが実験により示された.しかし,アシストが必要な動作段階ごとに分析すると,概ねパワーアシスト機器動作に関する種々の遅延 (計測,通信,DNN計算,機器動作)をカバーできることがわかってきている. b) アシスト機器の制御に応じてユーザの振る舞いの変化について,力学的,運動生理学的な分析が進んできた.以前から,アシスト機器が支援している状態で筋活動を計測し,筋活動の絶対量を分析することを行ってきた.それに加え,筋シナジーの観点から動作変容を計測することにより,ユーザが自然に (動作戦略を変えることなしに)アシストを受け入れられるかどうかなど,アシストの受け入れやすさや違和感などを議論する基礎が整ってきた.それにより,筋シナジーの変容の観点から,動作予測の精度や,先回りして,または遅れてアシスト機器を動作させることがユーザへに対して及ぼす種々の作用・効果を分析することが可能になってきた. c) アシスト機器の振る舞いやフィードバックがユーザの自己効力感や心理的な状態に与える影響について計測するための基礎を構築しつつある.ユーザの筋活動など,言葉では説明しにくい直接的な動作状態を音などに変換して直感的にフィードバックする手法などを実装している途中である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は2022年度の予算を一部繰越し,2023年度に執行した.そのため,本項は2024年度当初の方策となっている. 1) 運動主体感・自己効力感を損なわないアシストのためには,ユーザの動作意図の認識および動作予測を行うことが最も重要な項目となる.現在,これらを実現する目処ができた状態となっている.次の段階として重要となるのは,機器の制御がユーザに及ぼす影響を計測・分析することであり,アシスト中のユーザの動作状態,および,心理的な状態を計測することとなる.ユーザの動作予測に応じて,アシストのタイミング,強度を変えながら,動作状態の変容を分析することなどを,理研,東大,京大大学院生2人と協力して検討・実験を始めており,これらを進めていくことにより,多くの知見が得られることが期待できる. 2) ユーザの自己効力感を維持するためには,自分の状態を認知してもらいながら,励ますことなどが必要となる.この方法についても検討・実験を始めており,種々の知見が得られることを期待している.さらに,経時的な変化を評価するなど,より主体的な運動を促すための分析とその提示方法について種々の試みに着手する予定であり,フィードバック及び分析に基づいた励ましなどが,QOLを高めることに寄与することを目指す. 3) パワーアシスト機器を家庭環境などで安全に利用するための環境整備は本研究課題の範囲を越えているが,ユーザが安心して動作できるようなプロトコルを設定すること自体は自己効力感やQOLに大きく関わる.そのため,上記(1)の動作状態認識・予測に応じてアシスト機器の動作を,アシスト,抑制,何もしない,と選択しながら,なぜ選択したかを上記(2)によって説明するプロトコルを設計することが本研究の目標に合致する.そのための検討・実験を大学院生とともに始めている.
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