2021 Fiscal Year Annual Research Report
視覚世界安定化の神経基盤―目を動かしても世界が動かないのはなぜか―
Project/Area Number |
21H04896
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北澤 茂 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 教授 (00251231)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 充史 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 主任研究員 (10418501)
|
Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
|
Keywords | 背景座標系 / 磁気局所抑制法 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は毎秒3回も目を動かすのに、周囲の世界は動かない。脳はいかにして視覚世界を安定させるのか。我々は、脳は「背景」を基準に統合して世界を安定化しているという「背景座標仮説」を提唱し、これまでの研究を通じて、大脳皮質内側面の楔前部に「背景座標系」が存在することを実証した。しかし問題が二つある。一つは、背景座標が網膜座標からどのようにして構成されるのかという問題である。もう一つは、目が動いて有効な情報が遮断された期間も、世界が消えずに見えるのはなぜか、という情報補填の問題である。第一の問題については「脳は視覚入力を注意を向ける「図」と背景を構成する「地」を時分割多重表現して楔前部で統合する」という新たな仮説を提案して、全周動画刺激を用いた実験系で検証する。第二の問題については、脳全体のネットワークの中心に位置する楔前部が情報のバッファーとしても機能していることを磁気局所抑制法を使って実証する。本年度においては項目1についてはヒトを対象とする全周動画刺激を用いた実験系をfMRIに移植するための装置の開発を行った。特に、和田らが開発した視野角100°の視覚刺激装置に、新たに視線計測機能を追加する開発を進めた。項目2については、楔前部を磁気局所抑制することによって、数秒前に見た全周動画の風景の記憶が著しく障害されることについて学会発表を行い論文を投稿した。さらに、磁気局所抑制によって楔前部との機能的結合が低下する領域を網羅的に探索する実験を追加して行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各項目が着実に進展した。また、磁気局所抑制法の効果を報告した神経科学学会で、発表者がポスター賞を受賞した。
|
Strategy for Future Research Activity |
投稿論文に関して、査読者から磁気局所抑制法の生物学基盤の解明を行うべきであるとのコメントが付いた。予想を超える強い記憶抑制効果が得られたが故のコメントである。この点に関する対応を引き続き行っていく。
|
Research Products
(1 results)